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2015/12/29

みつあみ優等生と残念美人の組合せ最高かよ。読めば読むほど味わい深くなる女子高生ふたりの同居4コマ待望の2巻! 雪子『ふたりべや』第2巻

『ふたりべや』第2巻

 みつあみ優等生の桜子と無気力系残念美人のかすみ。高校進学を機に始まったふたりで一部屋の下宿暮らしも1年が経ち、桜子とかすみは2年生へと進級した。そこへ訪れるのは隣の部屋へ入居した新1年生ふたりとの新しい出会い。
 『ふたりべや』2巻では進級や修学旅行といった2年生ならではのイベントに、プールや花火といったご近所イベントに、いつものたわいのない日々の暮らしに、と、桜子とかすみがイチャコラ臨む様子を描いている。いや、本当にいつでもイチャコラしているんすよ。

 『ふたりべや』が面白いのは、一見すると下宿でゆるっとした日常を送るふたりの女子高生を生温かく見守る4コママンガでありながら、細かく見ると大変百合百合しい表現に満ちているところにあると思う。この点については1巻のときにも散々書き散らしたが、2巻でも同様の指摘を何点かしておきたい。なお、2巻では1巻に輪をかけて桜子がかすみ好きをこじらせてもはや公然の事実になっているため、このような指摘はもうあまり意味がないかもしれない。

『ふたりべや』第2巻p.14

 まずは第12話後半p.14より、デッサンモデルをしているかすみに頼み込んで雑誌のモデルをしてもらい、雑誌から切り抜いた写真を生徒手帳に入れて眺める桜子。そんな桜子の姿には思わず「彼女かよw」とつっこみたくなる。自分で撮った写真ではなく、わざわざプロの手を介したよそ行きのかすみを欲する辺りに桜子の愛の深さが窺える。

『ふたりべや』第2巻p.60 『ふたりべや』第2巻p.126

 第16話後半p.60より浴衣の着付けをググって瞬時にマスターする桜子と、第22話前半p.126よりハロウィンコスでかすみを出迎える桜子。桜子にとってかすみは宇宙の中心なので、かすみの役に立ったり、かすみを楽しませるためだったら桜子は何だってするのです。って、前者は桜子がかすみの浴衣姿を見たいからだし、後者はあわよくばかすみにイタズラ(隠語)したいからと、多分に煩悩が混ざっているけれど。

『ふたりべや』第2巻p.42

 そう言えば、第15話前半p.42で桜子はかすみの水着姿が見たいからかすみをプールへ行くよう説得するというストレートな欲望を見せていた。本当に桜子はいい味を出している。

『ふたりべや』第2巻p.119

 でも、かすみを喜ばせたいという桜子の気持ちに嘘偽りはまったくない。第21話後半では料理好きな桜子のためにかすみが買ってくれた料理ブックからかすみが食べたい料理を振る舞うことで、桜子はかすみを笑顔にしている(p.119)。「桜子 卵の扱い上手だよね」(同)と言うかすみは桜子がかすみの扱いがなによりも上手いということに気づいているのだろうか。そういうところも含めてすべてが尊い。

『ふたりべや』第2巻p.35 『ふたりべや』第2巻p.36

 桜子には中学生の妹、雛子がいるが、1巻で雛子がかすみを巡る恋のライバルであることを知った桜子は血を分けた姉妹であろうと嫉妬の炎を燃やす。第14話後半では雛子が実家から2時間半かけてわざわざ姉の下へ勉強の面倒を見て買(うという口実でかすみに会)いに来るが、そんな雛子に桜子は不平な顔を隠さないし(p.35)、雛子がかすみの手料理を望めば阻止しようとする(p.36)。なお、後者で桜子は「かすみちゃんが料理すると3回に1回くらいは変な味のものが出てくるんだよなあ…」と内心を吐露しているが、3回に1回の変な味の料理でさえ愛おしく感じるほどかすみの料理を幾度も食べているわけで、桜子の深海よりも深い愛のほどが窺える。

『ふたりべや』第2巻p.38

 とはいえ、やはり妹はかわいいようで、泊まっていくことになった雛子から桜子に毎週会えることが嬉しいと言われると桜子は簡単にほだされてしまう(p.38)。桜子さん、ちょっとチョロくないですか。

『ふたりべや』第2巻p.110 『ふたりべや』第2巻p.133

 そして、ふたりが桜子の実家へ行く第20話後半では帰りの電車で桜子がかすみに寄りかかって甘えるという乗り合わせた人が気絶しそうな非常に尊い姿を見せ(p.110)、雛子が何度目かの来訪を描いた第22話後半では実の妹が目の前にいるにもかかわらず桜子がかすみにプロポーズまがいの台詞を言うという恋人プレイをする(p.133)。なにこれ夫婦なの? 尊い……素晴らしい……。

『ふたりべや』第2巻p.95

 と、ここまで主に桜子の面からいかに桜子とかすみのふたりが尊い百合ップルであるかを見てきたが、かすみはかすみで桜子が宇宙の中心になっていると窺える描写がいくつもある。例えば、修学旅行を描いた第19話後半でかすみは直射日光が当たって暑がっている桜子のためにわざわざ日傘を買って桜子に差し掛けるという驚異のイケメン力を見せつけている(p.95)。

『ふたりべや』第2巻p.69

 また第17話前半では、「卒業したら一緒の部屋じゃなくなっちゃうの寂しいなー」(p.69)という桜子に「一緒に住めるところを探せばいい」(同)という甲斐性をかすみは見せている。桜子が何かを欲しがったときに適したものや言葉を与え、たとえ桜子が意識していなくても優秀な店員やコンサルタントのように先回りして桜子に必要なものや言葉を差し出すかすみからは、まるで大地のような懐の広さと温かさを感じる。かすみがどれだけ桜子のことを想っているかが窺えるというものだ。

 といった感じで2巻は1巻にも増して相思相愛になったふたりが眺められる1冊となっている。それは読めば読むほどに味わい深いものとなるので、是非二度三度と読んでみて欲しい。そうして最後にカバー下の裏表紙をそっと覗いて欲しい。うっかり呼吸が止まるから! マジで昇天するから!

『ふたりべや』第2巻p.25

 ついつい桜子とかすみに注目してしまったけれど、2巻から登場した桜子とかすみの後輩、もうひとつの「ふたりべや」の住人である芹とショーコの動向も見逃せない。世間知らずなゆるふわお嬢様と王子様系金髪陸上部員の組合せ最高かよ。

【出典】
・雪子 『ふたりべや』第2巻、幻冬舎<バーズコミックス>、2015/12/24発行
ふたりべや - デンシバーズ→連載中
雪子ブログ→作者のブログ

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例えば今年に入ってから単行本が出版された『小百合さんの妹は天使』や『ふたりべや』のように、専門誌ではなく一般誌で連載される百合マンガが増えてきたのはこの流れが定着してきた証拠じゃないかと思うので、少し考えてみた。

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