変わらない想いと変わってゆく気持ち 堂本裕貴『りぶねす』第3巻
『りぶねす』は1巻では兄であるテツが妹であるカスミをどれほど溺愛し、カスミがテツをどれだけ頼りにしているかを描いていた。2巻ではテツと兄妹の幼なじみでありテツに想いを寄せるアスカの関係に焦点を当てることで、テツがカスミを大事にしている理由とテツがアスカをどう思っているかが描かれていた。そして3巻ではテツとカスミという兄妹と、兄妹とアスカという幼なじみの、変わらない想いと変わってゆく気持ちが明確に描写されていた。
例えば13話から続く温泉話の締めくくりとなる16話でテツとカスミはデートスポットとして有名な教会へ行ってとある儀式をするが、その直後に小鳥が飛び立つ様子をカスミが眺めている場面がありカスミの「兄離れ」をほのめかしているように見える(p.69)。また、その1話前の15話でテツがアスカを教会ではなく夜祭りへ誘ったのは、テツがアスカに対して誠実でありたいと思うあまり教会へ誘えなかった代わりではないだろうか。
というような感じで3巻は前2巻よりも一歩踏み込んだ形で兄妹と幼なじみの変化が語られている。カスミがテツの庇護の下を離れ、アスカの恋が成就する日は案外と近いのかもしれない。というか、幼なじみ大勝利してください、と幼なじみ至上主義の自分は思うのでした。
それにしても1冊の単行本に温泉回と水着回があるとはお得だ……。
【出典】
・堂本裕貴 『りぶねす』第3巻、講談社<講談社コミックス>、2015/11/17発行
・りぶねす | マガメガ→第1話試し読みあり
・きまぐれや弐号店→作者のブログ
【関連記事】
・俺の妹がこんなに可愛いのにはわけがある。重度のシスコン兄貴と兄を妄信する妹の純度120%♥兄妹愛コメディ! 堂本裕貴『りぶねす』第1巻
・極度のシスコンマンガだと思って読んだら極上の幼なじみマンガだった――妹を溺愛するシスコン兄貴とツンデレ幼なじみ、それぞれの恋のあり方 堂本裕貴『りぶねす』第2巻
« ながいながい旅路の果ての物語 ミルメークオレンジ『ながいそうまとう』 | トップページ | 文化祭とその打ち上げとある人物との再会。めまぐるしく交錯するいくつもの想い。それらが織りなすこれは、まさに青春の物語。 佐々木ミノル『中卒労働者(ワーカー)から始める高校生活』第5巻 »
「マンガ」カテゴリの記事
- 【アイうたBD発売アドカレ】タターン! AIやロボットが登場するマンガを紹介します♪ その2 #アイの歌声を聴かせて(2022.07.26)
- 【アイうたBD発売アドカレ】タターン! AIやロボットが登場するマンガを紹介します♪ その1 #アイの歌声を聴かせて(2022.07.21)
- 時に生々しく、時にフェティッシュに。アパートの一室で育まれた恋や禁断の恋などを描いた珠玉の短編集! 時計『AV女優とAV男優が同居する話。』(2016.10.11)
- 恋する乙女はめんどくさいの! 宇佐美さん安定の片想いに部長の幼なじみ登場と、美術部は今日も平和です。 いみぎむる『この美術部には問題がある!』第6巻(2016.06.25)
- 誰が敵で誰が味方なのか。誰が悪で誰が正義なのか。劇場版『[新編]叛逆の物語』を初めて見たときのドキワクを思い出させてくれる物語。 ハノカゲ『魔法少女まどか☆マギカ[魔獣編]』第2巻(2016.06.16)
「感想」カテゴリの記事
- 【アイうた感想】劇場アニメ『アイの歌声を聴かせて』がどうして刺さったのかを5つの要素で考えてみた #アイの歌声を聴かせて(2022.02.28)
- 時に生々しく、時にフェティッシュに。アパートの一室で育まれた恋や禁断の恋などを描いた珠玉の短編集! 時計『AV女優とAV男優が同居する話。』(2016.10.11)
- 恋する乙女はめんどくさいの! 宇佐美さん安定の片想いに部長の幼なじみ登場と、美術部は今日も平和です。 いみぎむる『この美術部には問題がある!』第6巻(2016.06.25)
- 誰が敵で誰が味方なのか。誰が悪で誰が正義なのか。劇場版『[新編]叛逆の物語』を初めて見たときのドキワクを思い出させてくれる物語。 ハノカゲ『魔法少女まどか☆マギカ[魔獣編]』第2巻(2016.06.16)
- IT系ブラック企業の社畜がこんなに可愛いわけがない。読むと「今日も一日がんばるぞい!」という気力がもりもり湧いてくる(かもしれない)、すべての働く人への応援マンガ! ビタワン、結うき。『いきのこれ! 社畜ちゃん』第1巻(2016.05.31)
「商業誌」カテゴリの記事
- 時に生々しく、時にフェティッシュに。アパートの一室で育まれた恋や禁断の恋などを描いた珠玉の短編集! 時計『AV女優とAV男優が同居する話。』(2016.10.11)
- 恋する乙女はめんどくさいの! 宇佐美さん安定の片想いに部長の幼なじみ登場と、美術部は今日も平和です。 いみぎむる『この美術部には問題がある!』第6巻(2016.06.25)
- 誰が敵で誰が味方なのか。誰が悪で誰が正義なのか。劇場版『[新編]叛逆の物語』を初めて見たときのドキワクを思い出させてくれる物語。 ハノカゲ『魔法少女まどか☆マギカ[魔獣編]』第2巻(2016.06.16)
- IT系ブラック企業の社畜がこんなに可愛いわけがない。読むと「今日も一日がんばるぞい!」という気力がもりもり湧いてくる(かもしれない)、すべての働く人への応援マンガ! ビタワン、結うき。『いきのこれ! 社畜ちゃん』第1巻(2016.05.31)
- 現在進行形の青春と過去の青春が錯綜する高校生たちの物語 佐々木ミノル『中卒労働者(ワーカー)から始める高校生活』第6巻(2016.06.01)
この記事へのコメントは終了しました。
« ながいながい旅路の果ての物語 ミルメークオレンジ『ながいそうまとう』 | トップページ | 文化祭とその打ち上げとある人物との再会。めまぐるしく交錯するいくつもの想い。それらが織りなすこれは、まさに青春の物語。 佐々木ミノル『中卒労働者(ワーカー)から始める高校生活』第5巻 »
コメント