仕方ないしーなメモ

　2015年の冬アニメとして1期が放映され、3ヶ月後の今、夏アニメとして2期が放映されている『アイドルマスター シンデレラガールズ』。当初はまったく興味がなかったのにひょんなことから4話を見たらどハマりしてしまい、今ではデレマスのない生活など想像もできないほどデレマスに親しむ日々を送っている。とはいえ原作ゲームには手を出していないため、未だに某ロックなアイドルと同じようににわかファンでしかないけれど。
　1期の最終回以降デレアニのなかった3ヶ月はその空白を埋めるかのように（主にみくりーなとしまむーの）同人誌を探し回ったり、感想や考察を書いたブログを読み漁ったり、アニメのアイマスとその劇場版をDVDで見たり、デレマスのコミカライズを読んだりして日々をやり過ごしていた。本作『アイドルマスター シンデレラガールズ ニュージェネレーションズ』はその活動を通じて触れたコンテンツのひとつだ。

　本作は島村卯月の視点から島村卯月、本田未央、渋谷凛の3人のアイドル（の卵）を描いた物語となっている。
　話は卯月が彼女の下に届いた合格通知を携えて事務所へ向かうところから始まる。アイドルになれる喜びでうきうきしながら事務所の扉を叩くと、はたして室内は重苦しい空気に包まれていた。卯月と卯月より先に来ていた未央と凛、後に「ニュージェネレーションズ」と呼ばれることになる3人の初めての顔合わせの場となるはずのそこで、卯月は他のふたりとともに自分たちの合格が手違いだったことを告げられる。だが、トレーナーの温情によって出された課題に挑戦したことで卯月たちは補欠としてアイドルの第一歩を踏み出すことになる――。

　この物語の特徴は特定のプロデューサーがいないことと主人公である島村卯月の挫折が描かれていることだと思う。まず前者についていうと、元々ゲームのプレイヤーがプロデューサーである原作を意識したものなのか、本作ではルーキートレーナーがプロデューサーのような役割を担っている。もっとも、補欠アイドルでさしたる仕事もない身なれば、トレーナーの兼務でも卯月たちの仕事は回るのかもしれない（この業界のことはよくわからないので、業界の慣習なのかどうなのかはっきりしたことは言えない）。

　この場で特に取り上げたいのは後者の方だ。本作では第1話でアイドルへの道が早速閉ざされそうになったときと、物語の後半、3人の中でひとりだけ先に行ってしまった仲間の背中を見失いそうになったときの2回、卯月は悔し涙を流している。これはデレアニの卯月には（今のところ）見られない姿だ。

　デレアニは現時点（7/28）で15話まで放映されているが、卯月はこれまでに一度も挫折していない。346プロに入る前の養成所で一緒にアイドルを目指した仲間たちが次々と去って行ったときも、未央がニュージェネレーションズのデビュー記念ミニライブで観客の少なさに絶望してアイドル辞める宣言をしたときも、卯月はいつも明るく、常に前を見続けていた。今後16話以降のどこかで卯月が壁にぶつかるときが来るのかはわからないが、アニマスの主役格だった天海春香が終盤で爆弾を抱え込んだように卯月もそうなるのではないかという気がしている（14、15話やそのOPではそれを示唆するような描写も見受けられる）。
　話を戻すと、このマンガは卯月が未央、凛とともにアイドルとしての本当の一歩を踏み出すまでのあれこれや悲喜交々を描いた物語である。感情表現の豊かな卯月が見せるはじけるような笑顔と焦燥感や失意が生み出す泣き顔。未央や凛がトレーニングで見せる伸びやかな肢体や拙いながらも精一杯に表現する歌とダンス。それらがトレーナーとの師弟関係や他のアイドルとの交流を織り交ぜながら本当に魅力的に描かれている。2巻のあとがきには「いやあー…色々ありました。始めに予定していた形の終わりとはまた違いますが」と意味深なことが書かれているが、少なくともこの2冊に収められている物語はニュージェネの3人にとってこの上ないもののように思える。アニメとは別の階段を上るもうひとつのニュージェネレーションズ、その輝きに満ちた最初の一歩が本作には刻まれている。

　だらだらと書いてみたけれど、早い話がしまむーがわんわん泣く姿を早くアニメで見たいのです。

【出典】
・原作・バンダイナムコゲームス、漫画・namo　『アイドルマスター シンデレラガールズ ニュージェネレーションズ』第1巻、スクウェア・エニックス<ガンガンコミックスJOKER>、2013/4/25発行
・原作・バンダイナムコゲームス、漫画・namo　『アイドルマスター シンデレラガールズ ニュージェネレーションズ』第2巻、スクウェア・エニックス<ガンガンコミックスJOKER>、2013/11/25発行
・アイドルマスター シンデレラガールズ×スクウェア・エニックス→試し読みあり