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2015/07/18

幼なじみJCの友だち以上恋人未満の関係を描いた表題作とヤンデレにドMにどこかおかしな女の子たちが織りなす短編が素晴らしい百合コメディ ねこ太『トミコの気持ち』

『トミコの気持ち』

 幼なじみの女子中学生による友だち以上恋人未満の関係を描いた表題作と、ヤンデレにドMにおっぱい星人とどこかおかしな女の子たちが織りなす短編を集めた百合コメマンガ。それがこの『トミコの気持ち』である。作者はこれが初の単行本ということだけれど、我々が百合マンガにとかく求めがちな「幸せなエンディング」を簡単には与えず、じらしたりひっくり返したり思いも寄らなかったような方向へ持って行ったりと、その手腕からは今後とんでもなく素晴らしい物語を生み出してくれる可能性を感じた。

 表題作の『トミコの気持ち』はココロ(金髪の方)とトミコ(黒髪の方)という女子中学生の百合ップル未満を描いた物語である。

『トミコの気持ち』p.6より、ココロから水着着用を求められるトミコ

ココロから水着着用を求められるトミコ

 タイトルには「トミコ」の名前が入っているが話は主にココロの視点から描かれている。お年頃で色気づいたばかりのココロがトミコの言動に秘められている(かもしれない)「トミコの気持ち」に思いを巡らせては一喜一憂する姿はなんとも微笑ましい。またココロは男子中学生のようなメンタルの持ち主なので、トミコに水着姿を要求したりトミコのぱんつを見ようとしたりするなど、トミコにちょっかいを出しては反発されることに喜びを見出している。もう本当にココロの心は男子中学生。というより男子小学生。一方のトミコもココロに構われることがまんざらでもないようで、ココロに頼まれれば嫌々ながらも引き受けるし、ココロが風邪を引けば甲斐甲斐しく看病する。

『トミコの気持ち』p.15より、トミコのスカートの中を覗こうとするココロ

トミコのスカートの中を覗こうとするココロ

 そんなふたりの永遠に続くかと思われた幼なじみライフはココロの兄とその彼女の登場により少しずつ変化を始める。ココロのちょっと、いや、かなり変わった兄(兄?)がどういう人かにはここでは触れないが、兄と彼女の関係を目の当たりにしたことをきっかけに、ココロはトミコが自分にとってどういう存在かを見つめ、他でもない「ココロの気持ち」のありかを探るようになる。それはまさに少女期の終わりであり、ココロがひとりの女性として歩き始めた瞬間でもあるのだろう。多分変わらないのはこの先もトミコが隣にいるであろうこと。うーん、青春ですなあ。
 ココロとトミコのふたりがこの後どういう関係を作っていくのか。単行本で描き下ろされた最終回のその後がまさかの展開だったこともあって、気になって仕方がない。

『トミコの気持ち』より『OP!』

『OP!』

 表題作以外の短編は胸元開けすぎの彼女にムラムラする、もといハラハラする女子高生を描いた『OP!』や、学校の王子様が椅子にしれくれと迫る『家具の品格』など4編が収められている。前述のとおり出てくる女の子がいずれもどこかぶっ飛んでいたり歪んだ感情を持っていたりと、『トミコの気持ち』と同じ作者が描いているとはにわかに信じがたい。とはいえ、キャラたちの性癖やフェティッシュな表現を見るにつけやはり同じ作者なのだという認識に至り、作者の持ち味はそこにこそあるのではないかと思えてくる。や、話もいいんだけどね。ちょいエロも嬉しいよね。

『トミコの気持ち』

 最後に一言だけ付け加えておくと、脇とか足裏とか衣服の隙間とか胸元のほくろとか、単行本のカバーイラストがこうフェチっぽくてね、ぐっと来るね。大変すばらしい。

【出典】
・ねこ太 『トミコの気持ち』 一迅社<IDコミックス 百合姫コミックス>、2015/8/1発行
トミコの気持ち - ニコニコ静画 (電子書籍)→試し読みあり

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