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2015/02/09

卓越した想像力と妄想力――艦これ本編では語られない艦娘の真実に迫る4編の物語 某氏屋『艦隊これくしょん前日譚ファンブック ◯四二三事変 号外』(艦隊これくしょん~艦これ~二次創作)

『艦隊これくしょん前日譚ファンブック ◯四二三事変 号外』

 まるで公式設定かと見紛うようなシナリオと映画を見ているかのような表現で読む者を圧倒する『艦隊これくしょん前日譚ファンブック ◯四二三事変』(感想)。その号外という位置づけの本作では、前作と同様に艦これ本編では未だ明かされることのない艦娘の真実の一端に迫った4編の物語が収められている。

 なぜ艦娘は大破しても肉体的には怪我一つなく服が破れるだけなのかを描いた『加護』、なぜまるゆはまるゆなのかを描いた『命運』、ダメコンに秘められた願いを描いた『御守』、そしてケッコンカッコカリした艦娘が限界を超えてレベルを上げられる理由を描いた『指輪』。本作『艦隊これくしょん前日譚ファンブック ◯四二三事変 号外』ではこれら艦これ本編で語られていない4つの設定に焦点を当てている。
 本作が持つ面白さは前作と同じく艦これ本編では描かれていない、あるいは敢えて秘されている事物に迫っていることにある。いずれも気にしていなければそういうものなのだと受け入れてしまうような設定や特徴を掘り下げ、独自の解釈を与えて物語に昇華する。その語り口は絶妙で、ときにハラハラとさせ、ときにしんみりとさせながらその世界に深く深く引き込んでゆく。特にケッコンカッコカリを題材にした『指輪』はタマゴがニワトリだったというべきか、その逆転の発想には感嘆を禁じ得ず、またそれを最後のエピソードとして配置する演出もニクいと思わせる。そして前作で主人公だったハセベ先生が再登場しているのも前作の読者には嬉しい仕掛けだ。もはやハセベ先生が艦これ世界の黒幕と言われたら思わず納得してしまいそうになる。ハセベ先生、本当にいいキャラだ……。

 同人誌としての『号外』に収録された物語はすべてpixivで読めるようになっている。ただ、『号外』の物語は全編に渡って描き直されているため、紙面から受ける印象はpixivとはまたひと味違ったものとなっている。艦これ本編に寄り添いながらも本編以上に深い世界を覗き見た物語。何回も読み返したくなるようなそんな物語を手元に置いておきたくならないはずはない。

【出典】
・某氏屋 『艦隊これくしょん前日譚ファンブック ◯四二三事変 号外』 それがし屋、2015/1/25発行
艦隊これくしょんファンブック「◯四二三事変号外」→本文紹介

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