仕方ないしーなメモ

　現役JK社長にキスを迫られたりオカズ（隠語）にされたり、先輩メガネっ娘にエンターを求められたり、妖艶なお姉さんに酔った勢いで押し倒されたり。未だかつてオフィスで開発中にそんな幸運に恵まれたSEがいただろうか。いや、いない。思わず反語で表現したくなるほどこのマンガの主人公である丘史郎（22）はツイている。それは有能な先輩プロマネを引き抜きに来た初対面の着物女子に一目で気に入られて手錠をかけられてしまうほど。はたしてどれだけの同業者が彼の境遇を羨んだことだろう。

　さて、そんな丘は今巻では新卒1年目の新人ながらプロジェクトマネージャの役割を背負う。ベテランのプロマネである成瀬が抜けた穴を埋めるための代役であり、開発陣は本人を含めても3人という小所帯ではあるが、プロマネはプロマネ。個性的でクセの強いJK社長の百香と肉食系メガネっ娘の菜乃を相手に丘は初の管理業務で苦労をすることになる。
　このマンガの読者にはIT系の技術者が相当数いると思われるが、その中には丘と同じような苦労を重ね、丘と同じような罠にはまった記憶のあるプロマネ経験者も多いと思う。丘の采配にプロマネあるあるを見出してほくそ笑んだり、読み進めるうちに悪夢が蘇ってきて頭を抱えたり。丘に自分を重ねた者も少なくないだろう。
　もっとも今回の丘のように管理未経験の状態からいきなりプロマネを押し付けられるという状況もそんなにはない。そんなにはないだろうけれど、何があるかわからないのがこの仕事。常に最悪のパターンを想定していてもしばしば想像を絶する最高最悪の場面が訪れる。それらと対峙したときに戸惑ったり心のゆとりを失ったりしないこと。プロマネの力量が本当に試されるのは平常時ではなく炎上したときだ。もちろん平常時は作中にあるように「みんなに気持ちよく仕事させるのがプロマネ」（p.87）の主な仕事だろう。みんなを気持ちよくさせるのがプロマネ。ちぃ、覚えた。とりあえず何かにつけてお菓子をばらまくようにするとある程度気持ちよく仕事できるようになるぞい！

　新人SEにしてプロマネにステップアップした丘はその後勢いに乗って自らが開発に携わった商品のプレゼンまで担うようになる。百香の夢を叶えるための大きな一歩となるはずの「個人に寄り添う」「使えば使うほど賢くなるオナホ」（p.159）の成否は今、丘の双肩に託された。完結となる次巻で丘は百香とどんな未来を描くのか。

　それにしても、何をどうするとSEのお仕事で現役JKと目隠し手錠プレイに興じる機会に恵まれるのだろう？

【出典】
・此ノ木よしる　『SE』第3巻、白泉社<ジェッツコミックス>、2014/12/5発行
・此ノ木よしる「SE」| ヤングアニマル→第1話の試し読みあり
・此ノ木よしる公式ＨＰ→作者のサイト

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