仕方ないしーなメモ

　『中卒労働者から始める高校生活』第3巻は前巻で莉央の身に起きた事件の後日談から始まる。事件を通じてお互いの恋心を深め合い、彼氏彼女として付き合い始める真実と莉央だったが、2人の関係の変化は当然2人の関係だけを変えるものではなく、2人を取り巻く者たちの心情や行動にも影響を与えてゆく。2人の世界は今や中卒で入った工場や豪邸の自室ではない、外に向かって広がり始めているのだろう。
　やや抽象的になってしまったが、3巻のあらすじ的にはリア充爆発しろ！　とか、俺のお嬢様とヤンママが修羅場すぎる、とか、俺の妹がこんなに空気が読めないわけがない、とかいった趣なので、存分にもだもだにやにやするといいと思った。朝のしょーもないやり取りをしたメールを見てベッドでもだもだするお嬢様なんて、もうなにこのかわいい生き物という感じ。これだけでごはん3杯はいける。リア充爆発しろ！（畳の上でばったんばったんしながら）

　ところで、3巻では真実の妹ちゃんが大活躍していることに触れておきたい。
　妹の真彩はそれはもう本当にアホで、1巻でも名前を書けば合格すると言われた高校に落ちたほどのアホで、3巻でも「5教科中3教科が10点以下だったこととかよゆーであってね」（p.93）と自慢するぐらいのアホである。その上、空気を読めないし読まないから肝心なときにおにーちゃんの恋路の邪魔をする。いや、むしろ空気を読んだ結果なのか？　確かにおにーちゃんに対しては異常なほど鋭い勘を発揮している節もある。
　そんな愛すべきアホの子である真彩が敵意をむき出しにする人物が1人いる。真彩を「ロリ巨乳ちゃん」と呼ぶ真彩の天敵。そして和を乱し、相対的に弱い者に害をなす存在。真彩と彼との間に何があったかはここでは書かないが、真彩が何を大切にして何を守りたいと思うのかを知ることのできる重要なエピソードが3巻では描かれている。それはまた、両親がおらず兄と2人暮らしの真彩が父親代わりに兄の背中を見て育ってきたことが窺える場面でもある。直情的で、ときに自己矛盾に悩むこともあるけれど、ただ兄に守られるだけの妹ではない、一本筋の通った強さを真彩は持っている。

　真実と莉央の恋がこの先どうなるのか。1話がそうだったように10話も莉央の回想であることを示唆するモノローグになっているが、それが何を意味しているのか。4巻の展開からも目が離せそうにない。

【出典】
・佐々木ミノル　『中卒労働者（ワーカー）から始める高校生活』第3巻、日本文芸社<ニチブンコミックス>、2014/10/10発行→あとがきに「作者が通っていた高校の生徒会長は40代のサラリーマンだった」とあったけど、それだけでもう物語として読んでみたくなる。
・中卒労働者から始める高校生活 1 - ニコニコ静画 (電子書籍)→試し読み

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