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2014/07/14

女同士で幼女だけど愛さえあれば関係ないよねっ!? ギリギリどころか完全アウトな保育士さん4コマ。 やまもとまも『小杉センセイはコドモ好き』第1巻

『小杉センセイはコドモ好き』第1巻

 『小杉センセイはコドモ好き』がヤバい。何がヤバいって、タイトルロールの小杉先生(保育士♀)が変態じみた重度のこども好き、ぶっちゃけろりこんでヤバい。さらに小杉先生の想い人であるツインテ八重歯につり目のくるみちゃん(幼女)がツンツンかわいすぎてマジ天使でヤバい。そして、いちばんヤバいのはそんな2人をニヤニヤしながら愛でている自分です。本当にありがとうございました。

 作者のやまもとまも氏を最初に知ったのは「なすこん」というサークルの創作百合同人だった。ラブコメ、こと女性同士の恋愛を描いた百合においてはお互いにないものを求める度合いが強いと聞く。百合は元々同性であるがゆえに、男と女という性別からしてまったく逆の立ち位置にいる普通のラブコメよりも相手とのギャップが大きくなるのだろうか。確かに氏の作品である『後藤さんと岸田さん』シリーズでも、風紀委員にして学級委員の黒髪メガネっ娘である後藤さんと教室へのお菓子持ち込みに放課後買い食いの常習犯で茶髪のイマドキガールである岸田さんという、対極的な百合ップルを描いていた。そうしてその傾向を年の差的な方向へ押し進めたのが本書である。

 『小杉センセイはコドモ好き』は保育園を舞台にした4コママンガである。
 主人公の小杉先生はこどもが大好きで面倒見のよい、元気あふれる女性保育士だ。園児たちからは好かれていて保護者からの評判も上々、同僚の男性保育士である山田先生からは密かに想いを寄せられるなど、充実した毎日を送っている。
 一方、もう1人の主人公であるくるみちゃんはツインテールにリボンがよく似合う年長組の保育園児だ。まいちゃんを始めとしたお友だちや保育士の先生たちとおままごとやお昼寝など保育園児らしい日々を過ごしている。
 と、これだけを見るとほのぼの保育園4コマだが、『小杉センセイはコドモ好き』の本質は百合と変態と「ろりこん」(くるみちゃん談)にある。

 小杉先生がどれほどの変態でどれほどのろりこんかは4コマの最初の1本目(p.5)が端的に物語っている。

1話1本目の2コマ目

 「おはよう」と声をかけた小杉先生にくるみちゃんが挨拶を返さなかった1コマ目を受けて、2コマ目で小杉先生がくるみちゃんを窘めようとする。ま、まあ、お尻ぺんぺんぐらいならよくあることかな、と読み始めのときこそは思ったが、小杉先生の本性を知った後では小杉先生が単にくるみちゃんのお尻を触りたかっただけだったことがわかる。なにしろその本性は意外と早いどころか、次の3コマ目で露わになるのだから。

1話1本目の3コマ目

 へ、変態だー! いくら相手が同性で保育園児でも言っちゃいかんだろ!?

 と、この1話1本目を筆頭に小杉先生の変態っぷりは留まるところを知らない。ハグで園児の体温を体温計以上の早さと正確さで測ったり、園児の検ぱんつをしてぱんつの色柄を日誌に付けたり、懐に大量のぱんつを忍ばせていたり、暴言を吐かれて悦んだり、園児たちの健やかな成長を嘆くあまり彼女たちが年を取らないように願ったり、YESNO枕持参で園児に同衾を迫ったりと、なにしろ小杉先生の奇行は枚挙に暇がない。まったく、これが女同士じゃなかったら犯罪になっていたところだ(え?)。
 特に小杉先生の行動がエスカレートするのは、小杉先生の好みどストライクなくるみちゃんを前にしたときである。それがどれほど常軌を逸しているかは、入園当初はアニメの魔法少女に憧れるごく普通の幼女だったくるみちゃんをして一足飛びにツンツンした性格の現実的な大人っぽい幼女(?)にしてしまったほどだ。小杉先生のろりこんっぷりは年端のいかない幼女の将来を決定づけてしまうぐらい業の深いものなのだ。

 小杉先生とくるみちゃんの百合ップル(※まだ成立していません)以外にも『小杉センセイはコドモ好き』には多彩なキャラクターが登場する。
 「百合女子に恋する不憫男子」(p.113)である前述の山田先生は、小杉先生のこども好きな側面ばかり見てその本性には気づけない、まさに恋は盲目を体現したような男だ。ある意味劇中でいちばん幸せな人かもしれない。くるみちゃんのママは小杉先生のこども好きなところに感銘を受け過ぎて小杉先生に行き過ぎた感情を抱くようになっているし、小杉先生の幼なじみで同僚の女性保育士である佐野先生はドライな性格ゆえにくるみちゃんから好意を寄せられ、くるみちゃんの友だちのまいちゃんもキラキラした瞳でクールなくるみちゃんへの憧れを語るなど幼女ながら既に百合女子の素質を示している。
 そんな性別や年齢や関係を超えた「好き」というシンプルな感情と複雑な恋愛関係が織りなす『小杉センセイはコドモ好き』。小杉先生がくるみちゃんへの想いを遂げて恋人同士になる日は来るのか、続きが気になって仕方がない。

【出典】
・やまもとまも 『小杉センセイはコドモ好き』第1巻、竹書房<バンブーコミックス>、2014/7/28発行
なすこん→作者のサイト。

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