仕方ないしーなメモ

　1巻、2巻のときにチョロかわいい宇佐美さんと天然かわいい夢子先生には散々触れたので、ここでは『この美』における伏線やフラグの回収についてこの3巻を例として書いていく。
　1点目は2巻に登場した迷子の女の子が3巻の14作品目（『この美』では話数を「作品目」で表記している）で再登場していることだ。2巻の10作品目でその女の子、萌香は母親とはぐれて迷子になっているところを宇佐美さんと内巻くんによって発見された。結果的に宇佐美さんが内巻くんを好きになるきっかけを作ったという意味で萌香は宇佐美さんにとってはキューピッドというべき存在であるが、10作品目でも14作品目でも偶然コレットさんに出会っていたり、10作品目の出来事を契機に「びじつぶ」を目指していたり、萌香の祖父が宇佐美さんと内巻くんが所属する美術部の元顧問だったりと、萌香は1話限りのキャラクターだったとは思えないほどの地位を確立し始めている。恋のきっかけになったのだから最後の一押しをするのも萌香なのでは、と思うのは期待しすぎだろうか。萌香ちゃんまた出ないかなー（この人です）。
　2点目は宇佐美さんが内巻くんから聞き出した携帯電話の連絡先についてだ。2巻の12作品目で宇佐美さんは決死の覚悟で内巻くんと連絡先を交換した。12作品目は『この美』の中でも屈指のラブコメ回となっており、恋する宇佐美さんのかわいさといじらしさに心を打たれた向きも多いと思われる。このエピソードも12作品目1回限りで終わりかと思っていたところ、3巻の16作品目で見事に回収が図られた。宇佐美さんが内巻くんの連絡先を知っていることにツッコミを入れたのは2人の恋の行方を間近からおもしろおかしく見守る男、美術部部長その人である。部長は読者の期待に応えるかのように3ページに渡って連絡先ネタで宇佐美さんを赤面させてくれた。さすが部長、やるときはやる男だ。
　他にも3巻13作品目で出てきたハトやプールの絵が後の話で触れられていたり、1巻2作品目で内巻くんがコンクールで銀賞を取ったことが3巻18、19作品目の土台になっていたりなど、大小様々な出来事が基本的に１話完結のオムニバスになっている『この美』の世界が過去の蓄積で成り立っていることを示している。そして、そのことがひいては宇佐美さんの恋が少しずつ進んでいることを表しているようにも思えてくる。……進んでいるんだよね？

　さて、3巻では初めて宇佐美さんのクラスメイトが登場した。宇佐美さんに内巻くんが好きと言わせたり、宇佐美さんが内巻くんと身体的にくっつくよう仕向けたり、間接キスをするようなシチュエーションを作ったりと、3人のクラスメイトは好き放題に宇佐美さんの恋心をいじっている。だがそれも友情ゆえ、宇佐美さんかわいさゆえにやっていることなのだろう。なぜなら恋する赤面女子中学生ほど見ていておもしろ……かわいい生き物はいないのだから。宇佐美さんはいい友だちを持ったなあ。
　そんな感じで『この美』の世界は宇佐美さんの恋心とともに今日も少しずつ広がっている。

【出典】
・いみぎむる　『この美術部には問題がある！』第3巻、アスキー・メディアワークス<電撃コミックスNEXT>、2014/6/27発行
・この美術部には問題がある！ - pixivコミック→第1、2話と最新話が試し読みできる。
・MEARI→作者のサイト。

【関連記事】
・「理想の二次元嫁」を描くことに血道を上げる男子中学生が気になって気になって仕方ない女子中学生がジト目かわいい！　『この美術部には問題がある！』第1巻
・みんなが外堀を埋めてくれているのに自らの墓穴で掘り返してゆく宇佐美さんが残念かわいい！　いみぎむる『この美術部には問題がある！』第2巻
・中二病ツインテ巨乳美少女転校生の登場に宇佐美さんの片想い一人相撲の明日が心配でニヤニヤが止まらない！　いみぎむる『この美術部には問題がある！』第4巻（2015/2/26追記）
・祝・TVアニメ化！　それはさておき宇佐美さんは内巻くんへのはてしなく遠い片想い坂を今日も登る。　いみぎむる『この美術部には問題がある！』第5巻（2015/10/28追記）
・恋する乙女はめんどくさいの！　宇佐美さん安定の片想いに部長の幼なじみ登場と、美術部は今日も平和です。　いみぎむる『この美術部には問題がある！』第6巻（2016/6/27追記）