仕方ないしーなメモ

　かわいい女の子に好意を告白されてその上ぱんつを要求されたら。もし自分が今高校生だったら一も二もなくOKしてその場で脱いだぱんつを差し出すぐらいのことはするに違いないけれど、どうですか？（どうですかと言われても）
　そんな羨ましい、もといはた迷惑な告白から始まる、ぱんつを巡る物語。月刊マンガ誌で連載されている『俺のぱんつが狙われていた。』は、好きになった相手のぱんつが欲しくなるという特殊性癖を持つこのみちゃんとぱんつを狙われる村上くん、それに村上くんが想いを寄せるひいろちゃんとひいろちゃんに想いを寄せるガチ百合キャラのこーりんちゃん、その4人から成る四角関係を描いたぱんつまみれの物語である。

　で、その商業版『俺ぱん』の原型となった物語が『俺のぱんつが狙われていた～村田くんと柚子ちゃん～』である。
　これといった特徴のない村田くんが学年で屈指の才女にして美少女という声の名高い柚子ちゃんから告白とともにぱんつを要求されるところから始まるその物語は、柚子ちゃんがぱんつを求めて村田くんの家に不法侵入するところまでは商業版と同様であるが、その後の展開は違うものとなっている。それ以外にも商業版でのこのみちゃんに相当するようなキャラがいなかったり、ぱんつ弾幕が商業版より薄かったり、逆にオトナ度（？）が高かったりといった違いがある。
　だが、恋愛における価値観の違い、それを否定されることの辛さ、認められることの温かさ、そういった『俺ぱん』がきっと描きたいことは同人版で1つの完成形を見ていることがわかる。柚子ちゃんがなぜ村田くんのぱんつを欲しがるのか。柚子ちゃんがなぜ村田くんを好きなのか。村田くんが思う「好き」と比べたら柚子ちゃんのそれはよっぽどハードルが高い。けれど、柚子ちゃんはとても前向きで、頑張り屋で、ハードルが高ければ高いほど越えたくなる、想いを伝えたくなる。そして、その柚子ちゃんが抱く「好き」の有り様を村田くんは認めてくれる。だから柚子ちゃんは村田くんをますます好きになる。村田くんと柚子ちゃんのぱんつを巡る物語はこの本で幕を下ろしているが、村上くんとこのみちゃんのぱんつを巡る物語とは違った形で描かれた恋物語のその続きを読んでみたいと思わずにはいられない。

　同人作品として描かれたぱんつ話が商業作品でどのように進化するのか。『俺のぱんつが狙われていた～村田くんと柚子ちゃん～』は深山おからという作家の原点を巡る、温故知新の物語でもある。

【出典】
・深山おから　『俺のぱんつが狙われていた～村田くんと柚子ちゃん～』　kirazu、2012/5/5発行（2014/5/5再版）
・俺のぱんつが狙われていた　サンプル→内容のサンプル
・kirazu | 創作同人サークル→サークルのサイト

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