仕方ないしーなメモ

　家がは虫類と両生類だけを扱ったペットショップを営んでいるのにトカゲやカエルが苦手な男子中学生・環と無類のは虫類両生類好きな女子中学生・さやの恋を描いた『つるつるとザラザラの間』。さやのアプローチから始まった環とさやの初めてのおつきあいも2巻になると1巻よりもよりカップルらしさを見せるようになった。
　初めての休日デート、初めての彼女のお父さんへのご挨拶、初めての相合い傘と、次々と彼氏彼女の初めてイベントを経験してゆく2人。と、同時にそんな輝かしい一面だけでなく、2人が別の人間であるがゆえの不安が2人を襲う。さやはさやでなかなか行動に出ない環と自分を比較して自分だけが一方的に好きなんじゃないかと、ペットのヒョウモントカゲモドキを頭に載せながらベッドの上で思い悩む（とてもかわいい！）。環は環でボンクラ、冴えない、泳げないが特徴の地味系男子である自分に自信が持てず、過去に自分の欲望が引き起こした出来事のトラウマから同じ轍を踏むのではないかと思い悩む（うじうじすんなし！　ち○こ付いてんのか！？）。あーもう。あーもう！　これが青春か！　これが思春期か！！
　そんな2人が抱く好き合う者同士の幸せな悩みに、ヒョウモントカゲモドキの銀ちゃんが的確にツッコミを入れる。読者の声を代弁するこのトカゲは、は虫類や両生類と日常的に暮らす人々がいて、珍しいトカゲやカメの生態やは虫類と両生類にまつわる故事成語に詳しくなれるというこのマンガのもう1つの特徴を体現している。
　トカゲやヘビという一部の人以外は普段あまり縁のない世界がごく自然に溶け込んだ、環とさやの目も当てられないようなくすぐったい初恋物語は2巻でも健在だった。それどころかさらにヒートアップしていて、さやの「環くんのばか」発言に読者の悶絶水槽も決壊必至、仮に辛うじて決壊を免れたとしても悩める環が2巻の最後の最後で見せた爆弾発言と大胆行動に思わず単行本をぶん投げたくなる衝動に駆られることだろう（本を投げてはいけません）。

　それにしても、なんだかんだで環に親近感を覚えずにはいられないさやのお父さんといい、空気を読むに敏な環のお母さんといい、環に嫉妬し環を揶揄しながらも陰に陽に環の力となる友人の高屋敷と庄司の2人といい、環やさやの周りはやさしい人たちであふれている。やさしい2人だからこそ環とさやの周りにはやさしい人たちが集まり、そういう人たちがいるからこそ環とさやはそんな風に育っているのだと思わずにはいられない。女子校育ちで奥ゆかしい（笑）のに中身が非常に残念なさやのお姉ちゃんだって根はやさしい（に違いないん）だから早く幸せにしてやれよ（笑）。＞高屋敷

【出典】
・月子　『つるつるとザラザラの間』第2巻、講談社<アフタヌーンKC>、2014/3/7発行
・つるつるとザラザラの間 / 月子 - アフタヌーン公式サイト - モアイ→1話試し読みあり
・彼女とカメラと月子通信→作者のブログ

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