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2014/02/17

物語作家なもりの本気を見るのです! なもり『なもり百合姫表紙画集 truth』

『なもり百合姫表紙画集 truth』

 女子中学生のゆるい日常を描いたマンガ『ゆるゆり』で有名な作家がその掲載誌『百合姫』の表紙に綴った一連の物語。それが『なもり百合姫表紙画集 truth』として1冊の本となって登場した。

 表紙を見る。そこにはおさげの女の子がいて、カーテンの隙間から見える教室の中にはもう1人、自分のシャツのボタンに手をかけたショートカットの女の子がいる。お互いに見えているのかいないのか、その視線は交わっているのかいないのか。よく見るとカーテンの隙間になっている部分はその形のとおりに穴が開いているが、1枚めくったその先、教室の中を見ると実はショートカットの女の子が1人ではなかったことを知る。それがいったい何を意味しているのか、ここからどんな物語が始まるのか。
 また次の号、その表紙にはおさげの女の子がロングの女の子と楽しそうに手を繋いでいる姿が描かれている。ただ、ロングの女の子には見覚えがあって、ここでようやく前の号と合わせてなにやら不穏な恋の話が描かれつつあることがわかる。完結編の1つ手前の5冊目まで台詞は一切書かれない。あるのは何らかの物語を秘めた1枚絵か、前述のような技巧的な隠し絵だけだ。これらが毎号読者の間で様々な憶測を呼んだことは想像に難くない。
 そうして訪れる完結編、表紙からマンガとして始まる6つめの物語ですべてが明らかになる。通じ合う心とすれ違う心、届く想いと届かなかった想い、傷つける想いと傷つく心、秘められた想いと心の奥底に秘められた本当の想い。とんでもない結末を見せつけられて誰の想いがいちばん強かったのかを思い知る。単に彼女は自分の恋を成就させたかっただけで、恋路の果てにいる意中の彼女以外は最初からどうでもよかっただけなのだろうか。あのとき見せた笑顔は何だったのか。わかるのは、ただ彼女は誰よりも強かだったということだけだ。

 普段は『ゆるゆり』でのほほんとしたおバカでかわいい女子中学生たちのじゃれ合いを描いている作家が見せた物語作家としての本気。数枚のイラストと10数ページのマンガからなる短い話だが、物語としておもしろさと表現の特殊性も相まって百合マンガ史に長く語り継がれる1冊になるのではないだろうか。

【出典】
・なもり 『なもり百合姫表紙画集 truth』  一迅社、2014/3/1発行
ELEGY SYNDROME→作者のサイト。

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