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2013/10/20

記憶に残る同人誌 印度茶『行き先は空を見て』

『行き先は空を見て』

 同人誌はそれほどたくさん読んだわけではないが、それでもオリジナルと二次創作とを合わせて百のオーダーで読んでいる。その中には誰もがそのおもしろさを認めるベテラン同人作家の作品もあれば自分だけが名作だと思っているかもしれない作品もあり、読み応えのある厚い本もあればページ数は少ないのに何回も読み返したくなる味わい深い本もある。そんな同人誌の中から1冊だけ記憶に残る同人誌を選ぶとすれば、「印度茶」というサークルの『行き先は空を見て』を挙げたい。

 飛行機雲を見かけるとたいてい写真に撮っている。飛行機雲は比較的頻繁に見られる気象現象であり、条件さえ合えば1日の内にいくつも見ることができる。たいして珍しくもないけれど、飛行機雲を見かけると何となくカメラ(たいてい携帯電話)を向けてしまう。
 ところで、飛行機雲を撮るときに画面を縦型にするのは携帯電話にカメラが付いたことと無関係ではないと思う。調べたわけでも聞いたわけでもないため勝手な想像に過ぎないが、携帯電話にカメラが付く以前、観光地やイベントでの記念撮影ぐらいしかしない素人カメラマンは銀塩にしろデジタルにしろ横長のカメラをそのまま横持ちに構えて写真を撮るだけで、被写体や構図に合わせて縦持ちに撮ることはあまりしなかったのではないかと思う。ところが10年と少し前に登場したカメラ付き携帯電話は縦長の画面に合わせてそのまま縦型に写真を撮ることを素人カメラマンに強いた。ここでようやく従来からカメラを使ってきた素人カメラマンは状況に応じて写真を縦に撮ったり横に撮ったりすることを覚えたのではないか。飛行機雲はしばしば自分から見て縦向きに空の両端を結ぶことがあるため、その場合はそのまま縦型に飛行機雲を撮っている。

 同人誌『行き先は空を見て』は、寿命と引き替えに時間を戻すことのできる不思議な能力を持つ少女と青年にその願いを叶えてもらう者たちの話を描いたシリーズの1冊で、病気で余命幾ばくもない高校生の少年が飛行機の作る軌跡をカメラで熱心に追う高校生の少女との出会いをやり直そうとする物語だ。頒布は2004年の夏コミ合わせで、このマンガを描いたサークルである「印度茶」は残念なことに2013年の今はもう活動していない。
 すこし・ふしぎな導入でありながらわりとオーソドックスなボーイ・ミーツ・ガールものであるこのマンガのどこに琴線が触れたのか、今となってはわからない。ただ、22ページの短編にぎゅっと詰められた少年の願いと少女の想いは初めて読んだときから9年が経った今でも自分に影響を与え続けていて、飛行機雲を見かけると写真に撮るという行動に駆り立てている。

飛行機雲@秩父

 と、こんなことを思ったのは『氷菓』シリーズの3冊目『クドリャフカの順番』で摩耶花がとある同人マンガに並々ならぬ思い入れを見せていたのを見たからだ。マンガやアニメ、小説、ゲームと物語の表現形式にはいろいろなものがあり、商業や同人、あるいはネットなど流通形態にもさまざまなものがある。大きな物語から小さな物語まで物語が氾濫し、ゆえに容易に接することができ、うっかりすると見逃してしまう今だからこそ、自分がおもしろいと思った物語はできるだけ長く覚えていたいと思う。

【出典】
・ちゃい 『行き先は空を見て』 印度茶、2004/8/15発行
・「印度茶」は1999年頃から創作少女ジャンルで活動を始めた同人サークルで、手元にある本を見る限りでは2006年夏までは活動していたが、2013年現在はその活動を確認できない。
・米澤穂信 『クドリャフカの順番』 角川書店<角川文庫>、2008/5/24発行

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