仕方ないしーなメモ

　まどマギとは異なる時間軸の1つ、魔女は存在するが5人の魔法少女の誰も欠けることなく揃ってアラサーを迎えた世界。かつての魔法少女たちがそれぞれに家庭を持ち、あるいは持とうとし、ある者は育児中だったりする中、魔法少女の先輩として頼れるお姉さんとして慕われたマミさんだけが31歳になった今もひとり身で、バリバリの魔法少女だった頃と変わらぬひとり暮らしをしている。まどマギ第3話でマミさんは魔法少女になるかならないかで揺れるまどかに対して「恋したり遊んだりしてる暇もなくなっちゃう」と言っていたが、まさかそのフラグがこのマンガで回収されるとは誰が想像しただろうか。そして、元々同人誌の『巴マミ17年後』から始まる一連のシリーズとして描かれてきたアラサーマミさんが商業誌として展開される日が来るとは誰が予想しただろうか。
　マミさんと言えば、ベテラン魔法少女として華麗な戦闘を披露するエンターティナーとしての才能を持ち、中学生でありながら広いマンションに1人で住む孤高の存在であり、その反面、魔法少女の末路を知って同士討ちをするような豆腐メンタルの持ち主であり、後輩にも素直に弱みを見せる寂しがり屋な一面を持つという年相応の女子中学生である。また、誰もが「マミさん」と呼称するお姉さん性を持ち、必殺技に名前を付けたり「逝ってしまったわ。円環の理に導かれて」という発言に代表されるような中二病的言動を見せたり、早々に退場してしまったため、まどほむ、あんさやからあぶれたぼっちキャラとしての地位を確立したりと、本編から導かれる考察や付加設定がまどマギファンの間で人気を博しているキャラでもある。

　そのマミさんだからこそ『巴マミの平凡な日常』で描かれる御年31歳のマミさんは説得力を持つ。第1話冒頭で「明日は久しぶりに魔法少女のみんなと女子会なの！」とハシャイジャッテいるマミさんの姿を見るにつけ、中学生当時のケーキと紅茶によるティータイムを31歳ではビールとおつまみによる晩酌に変えたマミさんの私生活を見るにつけ、確かにあのマミさんが31歳になったらこのマミさんになるのではないか、というifの世界にも納得がいく。だが、仕事上がりのビール片手にくつろぐマミさんや中学生の時のジャージに身を包んでゴロゴロするマミさんに違和感を感じさせないのは、何よりも著者の力量に依るところが大きい。誰よりも魔法少女に夢を持ち、正義の味方としての自分に酔いながらも、相応の努力を重ね実力を身に付けて魔女に立ち向かった中学生のマミさんが、そのまま30代を迎えたらどうなっているか。その答えの1つがこのマンガには描かれている。

　思えば、まどマギを知ったのも、まどマギ見たさにニ○ニ○動画に課金したのも、マミさんが非業の死を遂げた第3話の放映直後にネット界隈が騒然としているのを見たからだった。マミさんがいなければまどマギを見ることはなかったし、10数年のブランクを経てジ○リ以外のアニメを継続的に見るようになることもなかったと思う。そんなマミさん（31）の無活躍（帯ママ）を今後もそっと見守っていきたい。

【出典】
・著・あらたまい、原作・Magica Quartet　『巴マミの平凡な日常』第1巻、芳文社<まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ>、2013/10/12発行
・South*east*east!＠東*南*東のHP→作者のサイト。

【関連記事】
・ひとりで逞しく生きるアラサーマミさんと家族の絆　あらたまい『巴マミの平凡な日常』第2巻（2014/8/11）