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2013/10/09

夏だ! 海だ! チラリもあるよ! 天乃咲哉『Doubt!』第3巻

『Doubt!』第3巻

 前半が彪(あや)、後半が真魚(まお)にフォーカスが当たり、飛鳥は空気……もとい、黒子といった感じで進む3巻。

 3巻では1巻、2巻に比べてイチルが舌先三寸で相手を言いくるめられることが少なくなっている印象がある。それは、けれど、イチルが弱体化しているからでも相手の人生経験が豊富だからでもないように思う。
 人と深く接することをしてこなかったのであろうイチルは今まであまりに人を知らなすぎた。物語が始まる以前は想像するしかないが、父親から妹探しの依頼を受けて以来、イチルは3人の妹候補と接触し、それなりに濃い付き合いをするようになっている。彼女らは生きた人間だ。彼女らはテキストにあるようにお手本みたいな反応をするのではなく、そのときそのときの気分や相手(多くの場合はイチル)に対する想いに応じてまったく違った反応を示す。おそらく今イチルの中にあるデータベースは彼女らにしかと相対する方法を持ち合わせていないだろう。それが彼がターゲットとして定めた相手といざ対峙するときにぶれ幅となって現れているのではないだろうか。

 彼は以前は無敵だったかもしれない。しかし彼は文字どおり井の中の蛙だった。イチルは今3人の妹候補という出口を通じて外の世界へ出ようとしている。それを見越してイチルに妹探しを頼んだのだとしたら、彼の父親もとんだタヌキだ。妹が実在するかどうかはさておき、イチルが妹を見つけるという目的を果たしたそのとき、イチルはようやく井戸の縁に立つのだろう。

 もっとも、イチルが単に恋とか愛とかいったものにニブチンで、後から後から寄ってくる女の子たちにペースを乱されているだけという説も捨てきれない。まったく罪作りな奴だね!

【出典】
・天乃咲哉 『Doubt!』第3巻、アスキー・メディアワークス<電撃コミックス>、2013/9/27発行
此花工房→作者のサイト。

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