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2013/10/10

感電死するほど君が好き。 よしづきくみち『クーロンフィーユ』第2巻

『クーロンフィーユ』第2巻

 寛造のアレを舐める仕草がエロかわいいノエミちゃんがマジ天使なので寛造が感電死するのも無理もないと思わせる『クーロンフィーユ』第2巻。

 「乾燥ワカメ怪人」とあだ名され、自分を忌み嫌う人間たちを力でねじ伏せながら生きてきた寛造と、超絶異常帯電体質のため人里離れた山奥でひとり生きてきたノエミの偶然の出会いを1巻では描いていた。その続きとなる2巻はノエミの住む小屋が火に包まれたところから始まり、ノエミの影響で変わりつつあった寛造がはとこの三橋兄妹から受けた想いをきっかけに再び自らを変えるまでの話となっている。

 2巻の見所の1つは何と言ってもあの御仁の活躍だろう。1巻では大切な妹を守るための過剰な反応とはいえ、決していい印象を持つような人物ではなかった彼が、まるで劇場版のジャ○アンのように頼もしい存在となっている。瞬時に状況を把握し、的確に舵を取り、口は悪いながらも寛造にはっぱをかける彼の姿はまさにイケメンというに相応しい。これでシスコンでなければただのイケメンだったのだろうが、残念、彼は妹が寛造と買い物に行ったことにすら嫉妬するような重度のシスコンなので、ただの残念イケメンである。だがそれがいい。それが彼の持ち味だ。
 そして、もう1つの見所はかの名作『E.T.』のあの名場面を彷彿とさせるような寛造とノエミの邂逅である。手首から手へ、手から指へ、相手の存在を確かめるかように、相手の鼓動を確かめるかのように繋ぎ替えてゆくその様子は、状況を考慮すれば科学で説明は付くのだろうけれど、奇跡の出来事と言っても過言ではないだろう。同じような境遇を持つ寛造とノエミはこのとき2回目の出会いを果たしたのだと思う。

 だが、寛造とノエミの境遇は似ているようで実はまったく似ていない。寛造とノエミはともに人を避ける生き方を選び、実践してきた。寛造は人の中で生きながら自らを守るために暴力には暴力で応じ、人を傷つけ人に反発しながら生きてきた。ノエミは静電気による反発が人を傷つけることを恐れ、そのことが自らを傷つけることを恐れ、人を自分を守るために人の外で生きてきた。2人が各々の生き様に至った背景は似ているように見えるが、電極のプラスとマイナスぐらい異なっている。しかしだからこそ、もう一度人の中へ戻ることを選んだのは寛造の方だったのだろう。

 存在する意味がないと泣く少女がいれば、少年が意味を見出してあげればいい。笑顔が欲しいと泣く少年がいれば、少女が笑いかければいい。ノエミが抜き身の刀なら、寛造がノエミを包む鞘になればいい。この先どんな困難が2人を待ち受けているかはわからない。それでも、複雑に見える世界ですら古今東西の天才たちが長年かけて編み出した数式を使えば表せてしまうほど簡単にできている。寛造とノエミと世界が簡単に繋がらないわけがあるだろうか。

【出典】
・よしづきくみち 『クーロンフィーユ』第2巻、講談社<講談社コミックス マガジン>、2013/10/9発行
つちのこ準星群→作者のサイト。
超絶帯電少女ノエミちゃんが帯電体質かわいい! 乾燥ワカメ怪人と帯電少女のすこし・ふしぎなボーイ・ミーツ・ガールを描いた『クーロンフィーユ』第1巻→1巻の感想。
この広い空の下のどこかに君はいるから。 よしづきくみち『クーロンフィーユ』第3巻→3巻の感想。(2014/4/13追記)

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