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2013/09/09

駆逐艦・電の背負った業と功徳、その歴史から導かれた艦娘としての優しさが身に染みるのです! ナノハチ『うんちくかんこれ 1』(艦隊これくしょん~艦これ~二次創作)

ナノハチ『うんちくかんこれ 1』

 今歴史が熱い。『艦隊これくしょん~艦これ~』というたった1つのブラウザゲームが今多くの者の目を軍艦やその歴史に向けさせている。サークル「ナノハチ」の『うんちくかんこれ 1』は艦これに登場する艦娘(かんむす)から5人+1人を取り上げ、文字どおりそのうんちくをこだわりのあるかわいいイラストとわかりやすい文章で綴った同人誌なのです。

 繰り返しになるが、今歴史が熱い。数年前から「歴女」という歴史マニアの女性を指す言葉があるが、それとは関係なく老若男女に、1900年代前半という特定の年代の、旧大日本帝国海軍の軍艦という特定の分野の歴史が今熱い。「軍艦とは?」と問われたら半年前までは「寿司屋で回ってくるよね」とか「端島って言うんでしょ。クイズゲームで見た」とか答えていた、それまで海軍や軍艦には疎かった層が、「駆逐艦・電ね。あの娘は本当に健気なんだよ! 例え敵であっても目の前に溺れる者がいれば助けずにはいられない、本当に優しい娘なんだよ!」と滂沱の涙を流して語ったり、茨城県は大洗へ行って在りし日の艦隊のアイドルを偲んだりしているという。それが軍艦を萌え系の女の子に擬人化した『艦隊これくしょん~艦これ~』というゲームの影響だというのだから世の中何が起きるかわからないのです。

 その艦これに登場する軍艦を擬人化した娘・艦娘から5人と、本の制作時には未実装だった潜水艦を予想した娘1人の計6人の艦娘を『うんちくかんこれ 1』では紹介している。自分自身センター試験では地理を選択したほど歴史には苦手意識があり、軍艦などのミリタリー系にもこれといった興味を抱かずに生きてきたが、沈没した軍艦に乗っていた英国軍人を駆逐艦・電と雷が助けた逸話などは電が救った命に嬉し涙を流す優しげなイラストの効果も相まって心打たれるものがあるのです。
 第二次世界大戦の終結から70年が経とうとしている現在、その記憶は急速に失われ、記録という形でしか人々の間には残らなくなりつつある。一方で、既に多くの有識者が指摘しているとおり、艦娘たちの設定には史実がふんだんに取り入れられている。悲しみに満ちた戦争の記憶、70年経った今も残る戦禍の爪痕、そして少なくない美談の一部が21世紀の今、艦これというゲーム、艦娘という愛しいキャラクターとして生まれ変わったのは、決して歴史を繰り返すためでも過去から目を背けるためでもないだろう。艦これや艦娘を通じて少しでも多くの人が戦争の歴史に触れ、今の平和な世の中をより楽しく謳歌するようになればいい。そんな願いと想いが込められている『うんちくかんこれ』はきっとその一助になるはずなのです。

 艦これの図鑑から推測するに9月9日現在で150近くの艦娘がいると思われる。艦娘を6人ずつ紹介していくと『うんちくかんこれ』は単純計算でも25までは続くことになるので、この先も楽しみなのです。

※ところどころに見られる「なのです」は秘書艦の仕業なのです。

【出典】
・文・おおたいさお、絵・たこみや 『うんちくかんこれ 1』 ナノハチ、2013年
ナノハチのページ→サークル「ナノハチ」のホームページ
艦これのマップには本当にあった思い出がたくさん詰まっているのです。 ナノハチ『うんちくかんこれ2 マップ解釈っぽい?』(艦隊これくしょん~艦これ~二次創作)→『うんちくかんこれ2 マップ解釈っぽい?』の感想(2014/1/27追記)

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