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2013/07/06

女性作家47人47色の大好きの形、『だって大好きなんだもん。』

『だって大好きなんだもん。』

 47人の女性作家がそれぞれの「大好き」「萌え」を見開き2ページのイラストと文章で綴ったアンソロジー、『だって大好きなんだもん。』。気になったシチュエーションから読むのもよし、お気に入りの作家から読むのもよし。一通り読めばいつも馴染んだ萌えだけでなく、新たな萌えに目覚める自分に気づくかもしれない。

 「男の子が女の子に髪の毛を触られている」や「一途に恋する片想い女子」といった高校生という青春真っ盛りの時を過ごす少年と少女が紡ぐ「大好き」はもちろんのこと、「なかよしの女のコ同士が、ちょっぴりはしたなくくつろいでいる」のような百合チック萌えや「人気者男子と地味男子が誰も気づかないところで、ひっそりと友情を育んでいる」のようなBLチック萌えから「お兄ちゃんの誕生日ケーキを手作りする小さな双子の妹」のような兄妹萌えまで縦横無尽に語り、はたまた「廃墟寸前の迷宮的高層建築に暮らす少女と彼女を護る半獣の大男」「一見ドライだけれど、実はお互いが信頼しあっている2人」のような人と人外生物との交流や信愛の虜にされたかと思いきや、「40の手習い、男のバレエ」でいい年したおっさんに対する覚醒を促す。47人の作家が描く「大好き」や「萌え」からは普段その作家がどんなことに興味関心や想いを抱いているかを垣間見ることができるだけでなく、その作家にさらに共感したり意外な一面を見たりすることもあるだろう。また、読者自身がどういった類の関係や状況を好ましいと思い適性を持つか整理し、ときにはそれまで思いも寄らなかった新たなツボを発見することにも役立つ。もし気になるシチュエーションを描いている作家がいたら、そのページの下にある作家紹介から新たな世界への扉が開くかもしれない。かくいう自分は表紙の男子高校生2人を描いた描き下ろしマンガを読んでそっち方面の扉が開きつつあることを感じている。

『いばらの王』第6巻p.14よりアリスとウサギ

 ところで、「廃墟寸前の迷宮的高層建築に暮らす少女と彼女を護る半獣の大男」と聞くと『いばらの王』のアリスとウサギを真っ先に思い出す。大小様々な怪物が跋扈する古城で謎の奇病メドゥーサに冒され体の大半を失った少女アリスと、アリスを怪物から守るためアリスが自身から生み出した巨大なウサギのぬいぐるみ。この1人と1匹の関係ほど奇妙で切ないものは他に心当たりがない。物語終盤、役目を終えて1人残されたウサギがアリスの忘れ物を手にして佇む姿など、筆舌に尽くしがたい悲しみを感じずにはいられない。それゆえ「廃墟の少女と半獣の大男」には共感を禁じ得ないので、小川先生、そういうマンガが読みたいです。

【出典】
・講談社編 『だって大好きなんだもん。』 講談社<KCデラックス>、2013年
コミックナタリー - 星野リリィや九井諒子ら執筆、ARIAの萌えシチュ連載が書籍化→執筆作家一覧あり
・岩原裕二 『いばらの王』第1-6巻、エンターブレイン<ビームコミックス>、2003-05年

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