仕方ないしーなメモ

　実家がは虫類・両生類専門のペットショップを営んでいたことが縁となり、男子校に通う中学二年生の環（たまき）と隣の女子校に通う同級生のさやが出会い、付き合う様子を描いた『つるつるとザラザラの間』。休みの日は家の手伝いでさんざんカエルやトカゲと向き合っているのには虫類や両生類が苦手な環が、は虫類が大好きでたまらないさやと付き合うに当たり、何とか苦手なことがバレないように振る舞う様が何ともいじらしい。そうだよね、男の子だし、彼女の前ではカッコいいところ見せたいよね。一方のさやも天然系な言動をしつつも、自宅に連れ込んでキッスをしたり、手作りのお弁当で環を餌付けしようとしたりと、なかなかどうして計算高い。いやいや、さやちゃんはそんなことしなくても大丈夫なんだよ！　中学生男子なんて女の子がじっと目を見つめるだけでコロッといっちゃう哀れな生き物なんだから！
　そしてまた中二と言えば思春期、もう少し学術的に言うと第二次性徴真っ只中であることを忘れてはいけない。そりゃあ、健全な中二男子たるもの、かわいい彼女がいれば初めてのキッスを想像したり、トカゲの質感から彼女の肌触りを妄想した挙げ句に××したりしても誰が環を責められるだろうか。いや、誰も責められない。また一方で、さやの中二女子に相応しいかわいらしい行動も見逃せない。彼氏にちょっとでもかわいく見られたい、少しでも変わったら気づいて欲しい、いっそ環くんの色に染まりたい。そんな二人を見ているともう萌え死ぬなんていうレベルではない。何なんだよあんたら！　早く結婚しちゃえよ！

　お互いによく知らなかったところから始まって、一緒の時間を過ごすうちに徐々に徐々にお互いを知るようになり、その分だけ少しずつ少しずつ惹かれ合っていく。ジェットコースターのように急転直下の展開もなければ、クラスや部活を巻き込むような複雑な恋愛模様もないけれど、しみじみとして心に染み入るいい恋物語だと思う。繰り返しになるけれど、こういうマンガが読みたかったんだよ。

【出典】
・月子　『つるつるとザラザラの間』第1巻、講談社<アフタヌーンKC>、2013年

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