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2013/07/13

不動産屋でがんばるおぼこい和(のどか)がのどかわいい!>ヮ< 『なぎとのどかの萌える不動産』第1巻

『なぎとのどかの萌える不動産』第1巻

 猫話は卑怯だ! 猫話は卑怯だ! すごくよかった!

 私事になるが、社会人になりたての頃に住んだ家は築2、30年は経つ年季の入ったアパートだった。2階建ての1階だったため庭に据えた物干し台で洗濯物を干せるのはよかったが、毎年夏の頃になると月に1、2回は草取りをしなければならず、それで庭付きの家に住むことの利点と面倒臭さを覚えた。部屋は6畳と4畳半の和室と台所(キッチンではなくてまさに台所)から成っていて、初めて内見したとき部屋の中が新しい畳から立ち上るい草の匂いで満ち満ちていたことを今でも覚えている。その新しい畳がまさかその後の悲劇を生もうとはそのときはまったく考えもしなかった。
 入居した年の最初の梅雨が佳境を迎える頃のことだった。仕事から帰ってきて家に上がり、靴下を脱いで畳の部屋に踏み込む。と、足裏が畳に張り付くような感覚があることに気づいた。部屋の電気を点けて足の裏を見てみるとなぜか青緑色になっている。そう、平日はずっと閉め切って風通しのない、梅雨のよどんだ重たい空気に晒され続けた結果、畳一面にびっしりとカビが生えていたのだ。その後、カビを拭き取ったり機械式の除湿機を導入したり休日は風を通すようにしたりした結果、畳にカビが生えるようなことはなくなった。社会人1年目にして学んだことは仕事を効率よく行う方法でも対人スキルでもなく、新しい畳はカビが生えるということだった。

 『なぎとのどかの萌える不動産』は借りる側ではなく貸す側、町の小さな不動産屋「萌える不動産」で働く和(のどか)と椰(なぎ)を描いたマンガだ。職を失って住み処を追い出されることになった和がひょんなことから不動産屋を営む椰に誘われて不動産業界に足を踏み入れるところから物語は始まる。未経験だった和が初めて1人で担当したお客さんへの対応に右往左往したり、椰の仕事に対する姿勢とお客さんの喜ぶ表情を見て不動産の仲介にはいろいろな形があることを知ったり、またそれらを通じて家を斡旋することの本質に気づき始めたり。和が趣味と経験を活かしながら不動産の仕事に少しずつ慣れていく成長譚としてお仕事マンガの側面をきっちりと描きつつ、和と椰が人に連れ添い家に寄り添い人と家を繋ぐ架け橋となる人情話として人と家が恋する様を丹念に描写している1冊で2度おいしいマンガ。それが『なぎとのどかの萌える不動産』の特徴であり、おもしろいところだと思う。不動産業界の最近の動向を踏まえていることも見逃せない。

 それにしてもラーメンといいハンバーグといい、食べ物がいちいち旨そうで大変目の毒である。メープルシロップをたっぷりかけたマシュマロパンケーキがどうしても食べたいので、今から『少女カフェ』の双子ちゃんがいるカフェサンフランシスコを探しに行ってくる

【出典】
・板倉梓 『なぎとのどかの萌える不動産』第1巻、講談社<KCデラックスKiss>、2013年

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