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2016/10/11

時に生々しく、時にフェティッシュに。アパートの一室で育まれた恋や禁断の恋などを描いた珠玉の短編集! 時計『AV女優とAV男優が同居する話。』

『AV女優とAV男優が同居する話。』

 AV女優とAV男優として生きる2人が文字どおりアパートの一室で同居する表題作の他、『兄が好きな妹と妹が怖い兄の話。』『自意識過剰なあたしの話。』『一日一回、あなたを好きだと思わせて。』などを収録した短編集である『AV女優とAV男優が同居する話。』。いずれも恋とか愛とか自意識といった境遇や血縁や自制心などの枷ではどうにも抑えきれない感情が男女の生き様を劇的に、あるいは繊細に変えてゆく様子を克明に描いている。

 『AV女優とAV男優が同居する話。』は不注意により住処を失ったAV女優の柊梓が同業者であるAV男優、館石大地の部屋に転がり込むところから始まる。のっけから年頃の男女がひとつ屋根の下で暮らすという状況に、AV業界で働いているのだからさぞかしAVのような生活(?)を送ることだろうという期待は、だが早々に裏切られる。

『AV女優とAV男優が同居する話。』p.14

「カメラの回ってない所で金にならないセックスしてどーすんの」(p.14)

『AV女優とAV男優が同居する話。』p.15 『AV女優とAV男優が同居する話。』p.16

「仕事であんだけやってたら家でやろうなんて気が起きないわよ/それにどうせやるんだったら…お互いお金になるんだしカメラの前でやった方がよっぽど面白いわ」(pp.15-16)
 そう豪語する梓とそれに同意を示す大地はごはんを作り合ったり一緒に部屋掃除をしたりとなんてことのない穏やかな日々を送る。

 しかし、2人が「仕事でセックスしていること」ことと2人がお互いに何らの感情も持たないことは同義ではない。同業の気楽さゆえか寝食をともにしたためか、あるいは単純に波長が合ったのか、2人は出会って時間がそれほど経たないうちにお互いに特別な想いを抱くようになる。

『AV女優とAV男優が同居する話。』p.23 『AV女優とAV男優が同居する話。』p.24

「仕事でセックスしてるだけなのにね/恋愛とは別物なんだけどなー/まあ、やっぱ普通は理解されないよね」(pp.23-24)
 セックスは仕事と割り切っていたはずの2人。だが物語が急展開を迎えるとき、仕事でするセックスと恋愛の延長線上にあるそれとの狭間に梓と大地は深く落ち込むことになる。
 セックスは仕事でするものであり、恋愛とは別物。「セックス」という行為に夢を見ていなかった梓と大地がある意味最も夢を抱いていたのかもしれない。2人のその後と続編である『AV女優とAV男優が同居する話。2』を読んでそんな風に感じた。

『AV女優とAV男優が同居する話。』p.99

 以降細かくは触れないが、双子の妹のそれぞれが2人いる兄を1人ずつ好いているという4人兄妹で、双子の片割れが寄せる好意に下の兄が懊悩する姿を描いた『兄が好きな妹と妹が怖い兄の話。』にしても、クラスのぼっち男子を自分と「みんな」のいる場に引っ張り出そうとする女子高生を描いた『自意識過剰なあたしの話。』にしても、ストレートに名付けられたタイトルであるがゆえに読む者に物語を強く印象づけ、深く長い余韻を残す。それは以前同人誌で発表された『彼女はもう死んでいるのに!』や『姉の恋人(女装男子)寝盗ってやった』も同様だった。そしてそこに描かれた物語はしばしば目を離せないほど生々しく、執拗なまでにフェティッシュに男女の有様を映し出している。だから、作者の描くマンガはとても面白い。

 実のところ本書に収められた作品の多くは過去に同人誌で読んだため、今回初めて読んだのは電子書籍で出版された作品と買っていなかった同人誌と描き下ろしだけとなる。それでも今回再読しても面白いものはやっぱり面白いし、読後感を新たにすることもできた。続編を初めて読んだ『同居する話。』は無印のヒロインである梓と『2』のヒロインであるリリの対比が大地という人間を浮き彫りにし、梓と大地の2人がますます好きになった。双子の妹の話などは片割れが操るですわますわ調お嬢様言葉の影響で読後しばらくの間は口調がおかしくなりましたの。
 あるときは残酷に突き放され、あるときは慈愛に満ちた眼差しを向けられた彼ら彼女らは今日もどこかで、それぞれの精一杯で生きているに違いない。まさに珠玉という言葉が相応しい物語がこの本にはある。

【出典】
・時計 『AV女優とAV男優が同居する話。』 小学館クリエイティブ、2016/10/16発行
時計塔→作者のサイト
AV女優とAV男優が同居する話。|公式サイト→公式サイト。

【関連記事】
え? え?? あれ??? どうしよう?? このマンガすごくおもしろいよ????? 妄想をトランクに詰めて『姉の恋人(女装男子)寝盗ってやった』

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