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2015/05/09

すごくすごい完結編。「まんがタイムきらら」連載の単行本未収録分が同人誌として登場! ぱきぽぢうむ『リリウムあんさんぶる unReleased』

『リリウムあんさんぶる unReleased』

 「まんがタイムきらら」で連載されていた百合コメ4コマ、『リリウムあんさんぶる』。第15話から完結第22話までの8話分は単行本未収録となっていたが、その8話分に描き下ろしを加えた同人誌『リリウムあんさんぶる unReleased』が先日のCOMITIA112で頒布された(書店委託あり)。まずはこのような形で咲来やいとなたちの未来を見せてくれた作者に最大級の賛辞を送りたい。ありがとう、そしてありがとう。

 『リリウムあんさんぶる』は芳文社刊の「まんがタイムきらら」誌で2012年2月号から2014年10月号まで22回に渡って連載された百合コメ4コママンガだ。おかっぱかわいい転校生の咲来(さくら)と高校生ながら喫茶店「りりうむ」のオーナーを務めるいとなの恋、2人の友人である真菜、潤香、カリンの三角関係、そしてカリンとは隣席の名無しのもぶ子、いとなの部下でいとなに心酔する社会人の莢、作中では1話しか登場しないが多分姉が大好きな潤香の妹を含めた8人の百合恋模様が描かれている。
 萌え系4コマ誌の4コママンガは女の子同士の濃密な絡みが多く、非萌え系4コマ誌と比べると描写が百合百合しい傾向にある。だが、多くの萌え系4コマがどちらかと言うと友情に近い感覚であり、また部活やメシ、あるいはゆるい日常を主軸に据えているのに対し、『リリウムあんさんぶる』は当初から女の子同士の恋愛に焦点を当て、いわゆるガチ百合マンガとして際立った存在の1つだった。第1話から第14話までを収録した単行本『リリウムあんさんぶる』第1巻(感想)は2013年9月末に発売されたが、4コマ好きの読者が投票する「4コマオブザイヤー2013」では同書は新刊部門6位にランクインしている(新刊部門は2012年12月から2013年11月までに発売された1巻または単巻の130作超が対象)。このことからも『リリウムあんさんぶる』が百合クラスタや4コマ愛好家からどれだけ支持を受けていたかが窺える。
 ところが、『リリウムあんさんぶる』は第1巻発売以降、連載のペースを落とすことになる。その事情については『リリウムあんさんぶる unReleased』のあとがきに書かれているが、精神的に辛い状況下にあった作者が明るい百合コメの『リリウムあんさんぶる』を描くためにどれほど身を削っていたか想像に難くない。かくして『リリウムあんさんぶる』は恐らく作者の想定よりも相当早く、だがしっかりと結末まで描き切る形で連載の幕を下ろした。それはまさに何としても読者へ続きを届けたいという作者のひたむきな想い、続きを読みたいという読者の切実な願い、そして両者を繋ぎたいという編集部の真摯な行動が結実したものと言えよう。単行本1巻の続きが同人誌として出版されるという情報で雑誌連載が終わっていたことを知った自分は頭の下がる思いだ。

 そうして、『リリウムあんさんぶる』で単行本未収録となっていた第15話から完結第22話までの8話分が同人誌『リリウムあんさんぶる unReleased』として登場する。

『リリウムあんさんぶる unReleased』表紙と口絵

同人誌の表紙と口絵(左)と単行本1巻の口絵(右)

 同書は商業単行本1巻と体裁を合わせるため、同人誌では珍しくカバー付きとなっている(なお、COMITIA112の会場でサークル「ぱきぽぢうむ」のスペースを訪れたときはカバー取り付け作業の真っ最中だった)。サイズはもちろん1巻と同じA6のため、1巻と並べて本棚に置いても違和感がない。カバー下の本体表紙にはキャラ設定画があり、名無しのもぶ子の4コマがあった1巻同様にお得感たっぷり、表紙を捲ると現れるカラー口絵にも前述の8人が描かれ、メインキャラ5人が描かれていた1巻との対応が取られている。そして奥付も1巻と同様にカバーイラストの咲来を配置する徹底ぶりだ。このように『リリウムあんさんぶる unReleased』は『リリウムあんさんぶる』単行本1巻に限りなく近い体裁をしている。1巻からの読者には何とも嬉しい仕掛けだ。また、それ故に経緯を知らない人が見たら一方が同人誌でもう一方が商業誌であることに気づかないのではないだろうか。
 内容についてはもうあの『リリウムあんさんぶる』1巻の続き、としか言いようがない。待ちに待った『リリウムあんさんぶる』の続きが読める。咲来やいとなたちの未来が見られる。それはもう僥倖というほかはなく、それだけで胸が熱くなる。しかも『リリウムあんさんぶる unReleased』はただ雑誌連載の単行本未収録分をまとめただけではない。あとがきによると、未収録分には連載時から「やりすぎない程度に可能な限り加筆修正を施し」(p.72)たという。実際、pixivに掲示された本文サンプルを見ると対象外になったコマはないのではと思わせるほど加筆修正のあることがわかる。その上、描き下ろしもある。カバーや口絵にあとがきの背景、そしてカリンに想いを寄せる名無しのもぶ子(読者からは「隣子ちゃん」「名無し子」と呼ばれているそう)が主役の短編マンガと、その量は大盤振る舞いと言ってもいい。特にもぶ子の短編は片想い百合スキーには堪らない話となっており、そうでない者でももぶ子を応援せずにはいられなくなるだろう。また、なによりこの短編は『リリウムあんさんぶる』が物語としては完結しても世界としてはこれからも続いていくことを想像させる。あとがきに「描き足りないことも多くコミティアなどで展開していく」(p.73、要旨のみ)という作者コメントがあるが、もぶ子の短編はそんな作者の意志が具現化したものと思えてならない。

『リリウムあんさんぶる unReleased』p.65よりもぶ子が主役の短編

描き下ろしの短編ではもぶ子が主役を務める。

 繰り返しになるが、『リリウムあんさんぶる unReleased』は『リリウムあんさんぶる』単行本に未収録の話を収めた同人誌である。そこには『リリウムあんさんぶる』の読者がきっと見たかった未来、予想しなかった恋の形、望外に幸せな少女たちの姿がある。もし単行本1巻を読んだことがあって同人誌の存在を知らない人がいたら是非同人誌を求めて読んで欲しい。もし単行本1巻を読んだことがあって同人誌も既に読んだ人がいたら是非もう一度最初から読み返して欲しい。そしてもし『リリウムあんさんぶる』をまだ知らない人がいたら是非単行本1巻と同人誌を合わせて読んで欲しい。
 最後にもう一度、作者であるあそか氏へ最大級の賛辞と最高の拍手を。『リリウムあんさんぶる unReleased』を読めて本当によかった。『リリウムあんさんぶる』に出会えて本当によかった。

【出典】
・あそか 『リリウムあんさんぶる unReleased』 ぱきぽぢうむ、2015/5/5発行
リリウムあんさんぶる unReleased→本文サンプル
ぱきぽぢweb→作者のサイト

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