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2015/04/14

ハンカチの用意はいいかい? 紗名と羽鳥と歩、3人の少女が親友になる。それが、とても嬉しい。 今井哲也『アリスと蔵六』第5巻

『アリスと蔵六』第5巻

 想像したものを具現化するというハチャメチャな超能力を持つ紗名と、人の想像力を奪うことで人を意のままに操ることのできる魔法を使う羽鳥、そして特殊な力はないけれど地に足着けて2人に手を伸ばす歩。これは3人の少女が親友になるまでを描いた物語である。さあ、ハンカチの用意はいいかい?

「これは出会った3人の少女が“親友”になるまでのお話」
 この一文は5巻の帯にも書かれているものだが、同じ趣旨で似たような言い回しのト書きが本編中には(少なくとも)3回登場する。1回目は3巻の終盤で紗名、羽鳥、歩の3人が初めて会ったとき、2回目と3回目はこの5巻で現れる。このことは何を意味しているのか。
 また、この一文が最初に登場したのは「紗名、羽鳥、歩の3人」が「初めて会ったとき」だった。これはすなわち3人が出会ったばかりの頃にこの先3人が親友になることをネタばらししているということであり、3人の少女以外の誰かが過去の事実として語っているということである。
 元々『アリスと蔵六』はある時点の紗名(と思われる人物)が過去を回想した物語であることが1巻で示唆されている。一方で、前述の一文は話者が紗名(と思われる人物)ではないことが5巻を読むとわかる。つまり、『アリスと蔵六』は紗名(と思われる人物)ともう1人別の人物とがまるで思い出話を語り合うかのように過去を辿った物語なのである。いったいどうしてそのような体裁を取っているのか。
 正直なところ、これらの疑問に対する明確な答えを今はまだ見出せていない。今はまだ紗名ともう1人の彼女が昔の出来事を思い出して懐かしむことができるようになったんだなと想像することしかできない。
 そして、そう考えるとなぜだかとても嬉しくなってくる。

 紗名の成長。普通の子供としての紗名の成長。『アリスと蔵六』は紗名の成長譚だ。1巻と2巻で紗名はそれまで軟禁されていた研究所から逃れ、蔵六という頑固ジジイの庇護の下へ入った。そして3巻から5巻ではその蔵六の手さえも少し離れ、自らの力と思考で紗名は羽鳥と歩という2人の少女と対話し、2人と親友になるという道を選ぶ。それは紛れもく紗名の成長だ。またそれは紛れもなく羽鳥と歩の成長でもある。それがとても嬉しい。泣けるほど嬉しい。そうか、成長するってこういうことだったのか。
 『アリスと蔵六』を読むともう一度成長してみたくなる。比喩としての成長ではなくて、文字どおり小さな子供から大きな大人になる意味での成長。でもそれは無理だから僕らは『アリスと蔵六』を読んで紗名になったつもりで成長を追体験する。幼女になったつもりで少女へ、やがて大人の女性へと成長するその過程を紗名に重ねて体感する。はい、そこのおっさん! 「幼女になった」で喜ばないように! ってそんなの自分だけですな。すいません。でも、すごく嬉しかったんだよ。

【出典】
・今井哲也 『アリスと蔵六』第5巻 徳間書店<RYU COMICS>、2015/5/1発行
アリスと蔵六|月刊COMICリュウ→試し読みあり
タイトル:未定→作者のサイト

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