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2014/11/18

俺の妹がこんなに可愛いのにはわけがある。重度のシスコン兄貴と兄を妄信する妹の純度120%♥兄妹愛コメディ! 堂本裕貴『りぶねす』第1巻

『りぶねす』第1巻

 単身赴任の父親と早くに亡くなった母親に代わり丹精込めて育てた妹を偏愛する兄と、優しく兄想いで天使のようにかわいい妹。『りぶねす』は理想の妹とは何か? 理想の兄とは何か? を世に問う、美しい(?)兄妹愛の物語である。

 1学年下の妹が高校に入学するまさにその日、「その笑顔さえあれば何もいらない」(p.3)と学校の屋上で妹への愛を叫んだ兄。物語は桜の舞い散る花鳥高校へ後輩として入学してきた妹・カスミを兄・テツが迎える場面から始まる。ぱっと見はどこにでもいるちょっとシスコン気味な兄貴とちょっと困った兄を慕う妹に過ぎない。……いや、そんなことはなかった。どこの世界に屋上から妹への愛を叫ぶ兄がいるものか。テツはただのシスコン兄貴ではない。重度のシスコン兄貴である。いや、重度なんて生易しいものでもない。もはや病気と言ってもいいレベル。テツの常軌を逸したそのシスコンっぷりは彼のモノローグに端的に現れている。

 「実の妹に萌えるなどありえない」「生意気だし」「だらしないし」 そんな全国の兄貴に告げよう それは兄貴の怠慢であると(p.11)

 そうしてテツは妹にとって理想の兄たらんとした。彼は勉強ができるのはもちろんのこと、体育会系の並み居る猛者たちが束になっても敵わない運動神経の持ち主であり、カスミの健康を第一に考えて磨いた料理の腕前は玄人はだし、その上カスミのワンピースまで仕立ててしまうという完璧超人である。これぞ理想の兄、まさに兄貴の中の兄貴。テツこそは全国6,000万人の妹たちが思い描く理想の兄であり、全国6,000万人の妹を持つ兄貴たちの頂点に立つ兄貴の中の兄貴である。こんな立派な兄がいて、カスミがお兄ちゃん子にならないわけがあるだろうか。いや、ない(反語)。
 かくしてカスミは無事に(?)お兄ちゃん大好きっ子として育った。テツの寵愛を一身に受け、蝶よ花よと育てられ、カスミは今やテツが理想とする「フェチズムの集合体」(p.12)となった。これぞ理想の妹、妹の中の妹。カスミこそは全国6,000万人の兄貴たちが思い描く理想の妹であり、全国6,000万人の兄を持つ妹たちの頂点に立つ妹の中の妹である。そんなカスミに読者のお兄ちゃんたちが萌えないわけがあるだろうか。いや、ない(反語)。

 と、言ったような感じの、普通の人ならドン引きするレベルの兄妹愛がこのマンガでは描かれている。さすがの俺も引くわー。で、兄が兄なら妹も妹。目はついつい妹に対して異常な執着を見せる兄のテツに向かいがちだが、なかなかどうしてカスミも度を超したブラコンっぷりを見せてくれる。でもかわいいから許しちゃう。カスミちゃんマジ天使。

『りぶねす』第1巻よりカスミちゃんマジ天使(p.42)

 ところで、テツ&カスミ兄妹の隣家には彼らの幼なじみが住んでいる。アスカという名前の彼女はテツとは同じ高校に通う同級生であり、剣道部に所属しショートカットの似合う活発な女の子だ。まあ簡単に言うと、大変残念なことにアスカはテツのことが気になっている。はたから見るとこんなシスコン男のどこがいいのかとは思うが、アスカはテツのことを相当意識している。アスカはテツがカスミの入学祝いをしたいと言えば家業のお好み焼き屋を(多分貸し切りにして)一緒に祝い、テツがカスミのことで相談したいと呼べばベランダに出てくる。

『りぶねす』第1巻より投げた枕のぬくもりが冷めない距離に住むテツとアスカ(pp.56-57)

 そう、兄妹の家とアスカの家はベランダから手を伸ばせば届くぐらい距離が近い。スープが冷めない距離ならぬ、投げた枕の温もりが冷めない距離。ぶっちゃけ羨ましい。自分も隣に住む幼なじみの女の子が投げた枕を受け止めてそのぬくもりに顔を埋めつつくんかくんかしたい! ぐぬぬ……。あれ、何の話だっけ?
 アスカはテツがカスミにぞっこんのシスコンで、カスミがテツに首ったけのブラコンであることを知っている。アスカは兄妹の間に今以上に自分が踏み込む余地のないであろうことにも気づいている。そして、アスカにとっては恋敵であるはずのカスミを本当の妹のようにかわいがっている。アスカの恋路は前途多難、恋の土俵にはかなり濃厚な負け戦の気配が漂う。それでもアスカはテツに攻め込む。剣士としての性がそうさせるのか、元々持っていた資質なのか、アスカは幼少の頃からずっと見つめてきたテツを落としにかかる。このマンガは報われない(かもしれない)幼なじみとの恋に燃える女子高生を描いた物語でもあるのだ。

 以上をまとめると、『りぶねす』は理想の兄と理想の妹を追求する純度120%の兄妹愛を描いた物語であり、残念な幼なじみとの不毛な恋を描いた不憫な物語である。個人的には前者はもう盤石だと思うので、ここはひとつ後者の方を応援していきたい。やっぱり幼なじみのラブコメっていいよね~。

【出典】
・堂本裕貴 『りぶねす』第1巻、講談社<講談社コミックス>、2014/11/17発行
りぶねす | マガメガ→第1話試し読みあり
きまぐれや弐号店→作者のブログ

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