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2014/10/18

このもどかしさがたまらない! 「かわいい」がいっぱいの百合同人誌をまとめた珠玉の短編集。 野中友『ハミングガール』

『ハミングガール』

 うひょー! まさか野中友氏の百合同人誌を商業単行本でまとめて読める日が来るとは!

 思春期をこじらせているという野中友氏は男の子と女の子の恋愛ものから女の子同士の百合ものまで、かわいさともどかしさと切なさと、ときに七転八倒したくなるような悶絶と古傷を抉るような展開のマンガを同人誌で発表している。本書はそんな氏がこれまでに描いてきた同人誌の内、創作百合同人6作に描き下ろしの1作をまとめた短編集である。

 収録作は同性の友達に好意を寄せられていると思い込んだ女の子の独り相撲がかわいい『Lalala Melody』、言葉選びが下手な女の子の話である『カラフルワード』、相手が同性だからこそ単に好きとか憧れとかだけでなく嫉妬などの負の感情も入ってしまうことについて考察する『スイッチングノイズ』、日常系百合4コマの『まいにち!ブランニューデイズ』、そして幼なじみの女の子2人の小中時代から高校生までのもどかしい関係を追った『あのエーデルワイスは私のように』『ウスユキパズル』とその続編である描き下ろしの『花咲かキュートガール』の7作となっている。

 『Lalala Melody』については以前書いたので割愛。

 『カラフルワード』は髪も服も学校指定のまっくろくろな宮上さんと言葉を選ぶのが下手なイマドキガールの小越さんの話である。初めは小越さんに心ない言葉をかけられて悪感情を抱いていた宮上さんだったが、小越さんの言葉には悪意がなく単に選び方の問題だけと気づいて小越さんに助言を与え――。
 口下手な小越さんの言葉に彩りを与えるのは他でもない宮上さんの存在だったが、地味っ子の宮上さんを彩るのは他でもない小越さんの言葉だった。まったくなんという素晴らしい関係。また小越さんのギャップ萌えも素晴らしいし、小越さんにギャップ萌えする宮上さんも素晴らしい。素晴らしいしか言っていないけれど、どこをとっても本当に素晴らしい。

 『スイッチングノイズ』は同じ合唱部に所属する好きな女の子がソロに選ばれたことを嬉しく思うと同時に嫉妬心を抱いてしまう水沼さんと、そんな水沼さんの心中を察して同性を好きになることの障害とその対処法を切々と説く国東さんの話である。百合ップルの物語はお互いに自分にないものを持っていたり、タイプが真逆だったりすることが多いというのは定説だと思うけれど、実はそれだけには留まらないないという指摘はまさに目ウロコだ。ただ「好き」というだけの現象に留めず、感情を分析して論理的に話を展開するところはいかにも作者の作風という感じで大変素晴らしい。国東さんは水沼さんが多分好きなのだけれど、鈍感な水沼さんは相原さんしか目に入っていないという、国東さんの不憫さもまた素晴らしい。素晴らしいしか言っていないけれど、どこをとっても本当に素晴らしい。

 『まいにち!ブランニューデイズ』は作者には珍しく(?)ストレートにかわいい、ほんのり百合風味の日常系4コマとなっている。もうただただかわいい。ひたすらかわいい。

『ハミングガール』裏表紙より心陽と珠希

 『あのエーデルワイスは私のように』『ウスユキパズル』『花咲かキュートガール』の3作は幼なじみである珠希と心陽(こはる)の小学生から高校生までのくすぐったくてもどかしい関係を描いた話である。
 珠希と心陽の小学生から中学校に上がるまでを描いた『あのエーデルワイスは私のように』は珠希の視点から心陽との悩ましい関係を語っている。男勝りで心陽を守ると誓った珠希は一方でいかにも女の子という感じの心陽に複雑な感情を抱いていた。というのも、他の女の子に告白を受けたことで珠希は自分が女の子ではない、何者かになってしまったのではないかと思ってしまったからで……(すごい子がいたもんだ)。一言で言うと、同性との恋に悩める女子小学生は素晴らしい。
 『ウスユキパズル』『花咲かキュートガール』はともに高校生になった心陽の視点から相変わらずつかず離れずの珠希との関係を描いた話となっている。小学生の頃は男の子のようだった珠希が男女を問わず惹きつける魅力的な女性として成長しつつあることで、居ても立ってもいられないけれど自分からはなかなか行動を起こせない心陽。かまってちゃんでいろいろアピールはするけれど直接的な行動には移してこない珠希に業を煮やしている心陽。陰に陽に珠希がかわいいと言うけれど、好きとは言えない心陽。まったくこのもどかしさったらない。かわいいったらありゃしない。そして物語を読み通した後にカバー下を見ると……キマシタワー!
 まとめると、お互いにわかっているのに付き合いが長いからこそ言い出せないくすぐったさ、お互いのことしか見えていないのに最後の一歩を踏み出せないもどかしさが味わえる幼なじみ百合は本当に素晴らしい。リリンの生み出した文化の極みだよ。結局素晴らしいしか言っていないけれど、どこをとっても本当に素晴らしい。

 『ハミングガール』は発表済みの同人誌が元になっているため既に読んだことがあるという向きもあるとは思うが(実際、自分も6作中4作は同人誌で持っている)、たとえ描き下ろしを読むためだけだったとしても買う価値はある。また、なにより同人誌だとどうしても頒布経路が限られてしまうため、あの名作この名作が書店流通で広く読まれるようになることはとても素晴らしいことだと思う。結局最後まで素晴らしいとしか言ってこなかったけれど、どの作品をとっても本当に素晴らしい。まったく、すごく、誰彼構わずこのマンガを読ませたい!

【出典】
・野中友 『ハミングガール』  一迅社<IDコミックス 百合姫コミックス>、2014/11/1発行
UnisonBell→作者のサイト

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