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2014/07/08

間違えたっていいじゃないか、クイズだもの。 杉基イクラ『ナナマル サンバツ』第8巻

『ナナマル サンバツ』第8巻

 7巻から続く因縁の兄妹対決に終止符が打たれ、舞台を京都に移してのクイズ合宿が始まった『ナナマル サンバツ』8巻。合宿によって新たな仲間との出会いを果たした識たちが得るものとは。

 思い返すと、『ナナマル サンバツ』というマンガにはこれまで大人がほとんど登場してこなかった。高校のクイズ研究会を舞台にした高校生が主人公のマンガなのだから、大人がいないことはそれほど不自然なことではない。一方で、部活マンガなれば「あきらめたらそこで試合終了ですよ」と諭すような顧問の先生がいても不思議はない。このマンガがこれまで大人の不在に違和感を感じさせなかったのは、文蔵高校クイズ研究会が同好会であることと、会長にして部員で唯一の2年生である笹島が識たち1年生のメンター役を果たしていたためだろう(そのことを裏打ちするように8巻には笹島が顧問に間違えられる描写がある)。また、他校でも上級生が下級生を導いたり諭したりする場面があった。
 しかし8巻に至って初めて識たちと志を同じくする大人が登場する。識たちクイ研の面々が京都で出会ったのは識たちと同じくクイズに青春をかける高校生と、そしてかつてクイズに青春を燃やし今なお熱い闘志を抱き続ける大人のクイズプレイヤーだったのだ。アメリカを横断するような大会に出たことのある坊さんや賞金クイーンの名をほしいままにした大阪のおばちゃんなど、多彩な経歴を持つ大人たち。その彼らの口から語られるのは日本におけるクイズの来歴と今、それに彼らがクイズに注ぐ情熱と想いだ。だが、彼らがまず最初に識たちに示したのはクイズの勝ち方でもクイズそのものでもなく、百人一首でのかるた遊びだった。

 作中でも語られているが、毎日のように視聴者参加型のクイズ番組がテレビで放映されていた時代があった。自分が子どもの頃を思い出してみてもアタック25やアップダウンクイズを毎週楽しみにしていたし、夏休みや冬休みの朝は100万円クイズハンターを見ることから始まっていた。そして毎年秋口にはウルトラクイズを観戦して、いつか自分もアメリカ横断してやる! というささやかな野望を新たにしていた。そういった数々のクイズ番組では、テレビの向こうのクイズプレイヤーは矜持と意地を賭けたガチンコバトルをしていたし、タレントでもアニメの主人公でもないけれど確かに彼らは子どもの自分にとっては身近なヒーロー、ヒロインだった。それでも彼らがいわゆるアニメやドラマのヒーロー、ヒロインと趣を異にしていたのは、戦場に身を置きながらも戦いを心の底から楽しんでいたからだろう(と思ったけれど、某7つのボールを集めるアニメで主役だった戦闘民族などの例外もあるなあ……)。
 クイズは多かれ少なかれ何らかの優劣を伴うものである。百人一首でのカルタ勝負もしかり。いずれも負ければ悔しいが勝てばドヤ顔、負ければ地獄だが勝てば天国だ。それでも。レトリックとはわかっていても、クイズもカルタも「楽しんだもん勝ち」である。数々の大会で名を馳せた西のクイズ王たちが東から訪ねてきた高校生たちにまず伝えたかったことは、その身を以て体験してみないとわからない、でも一度でも知ってしまうとその味を忘れられない、しかしついつい忘れがちで最も大切なことだった。

 ところで、作中では特に言及されていないが、埼玉から京都を移動する際、間に大垣夜行を使っているところを見るに青春18きっぷを利用して交通費を浮かせているようだ。クイ研部員は迅子さんを含めてょうど5人だから片道で1セット、往復で2セットをちょうど使い切れる。ただ、18きっぷで安旅行するところはいかにも学生という感じがするけれど、往復ともに決して寝やすいとは言えないシートの夜行快速にしてしまうあたりは若さのなせるわざだなあ。

【出典】
・杉基イクラ 『ナナマル サンバツ』第8巻、角川書店<角川コミックス・エース>、2014/7/4発行
いくら亭→作者のサイト

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