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2014/07/19

恋敵はお兄ちゃん? 男の娘を姉(?)に持つ健気な妹の気苦労が絶えない賑やかな日々。 かさまひろゆき/宮月もそこ『兄がライバル!』第1巻

『兄がライバル!』第1巻 「あの芥川賞作家が推薦する唯一の萌え漫画!」

 「容姿まあまあ(だといいな)、成績ふつう」な16歳の女子高生・真琴の姉・晶には秘密があった。年は1つ違い、容姿端麗で成績優秀、お嬢様高校に通い女子力も高い。そんな絵に描いたお嬢様を体現したようなお姉ちゃんは実はお兄ちゃんだったのです!
 そんな一風変わった姉妹(兄妹?)の物語である『兄がライバル!』は、妹が片思いするクラスメイトの少年に姉(兄?)が一目惚れしてしまった(え?)ところから幕を開ける。

 最近は女装をして少女のように振る舞う少年や生まれながらに女の子っぽい男の子、いわゆる男の娘が登場する作品が珍しくない。あくまで感覚的な話になるが、マンガや小説を読めば10作に1人ぐらいは男の娘がいる気がする。なお、百合キャラは2作に1人はいると思う。って、単に読んでいるものが偏っているだけです。本当にありがとうございました。

『兄がライバル!』第1巻裏表紙 「この中に1人男の娘がいる!」

 『兄がライバル!』は男の娘である晶と男の娘を姉(兄?)に持つ真琴の姉妹(兄妹?)を中心に、彼女たちの騒がしくも楽しい毎日を描いたラブコメBL百合マンガである。なにしろ第5話のサブタイトルが「百合のちノーマル、ところにより薔薇」だから確かだと思う。物語は姉妹の他、姉妹が想いを寄せる少年の司くん、晶の親友である翠、姉妹の幼なじみの朱音を交えた5人で進んでゆく。
 晶が通う女子校の同級生で晶が男であることを知っている翠は晶のよき理解者である。ただ、晶が男であることを知っているがゆえに更衣室での着替えなどの際にいらぬ心配事を抱えることになった苦労人であり、晶を理解しよく知っているがゆえに晶に対して友情を越えた感情を抱くようになった残念な人でもある。ちなみに作中唯一のメガネっ娘で貴重なおさげ枠である。おさげっ娘はいいね。リリンの生み出した文化の極みだよ。
 幼い頃に姉妹と親交があったが引っ越しによって姉妹とは離ればなれになり、再度転校という形で姉妹の元へ戻ってきた朱音は、初登場こそ第10話と遅まきながらもその強烈なキャラクターで4人娘(4人?)の一角を占めるようになる。朱音は将来を(一方的に)約束した晶が男の娘になっていたことを知って晶を男に戻そうと画策するが、翠による防衛や生来のドジっ娘気質が災いして少なくとも1巻の中ではその目的を果たせていない。そんな朱音は長い髪をツーサイドアップにしたツリ目ちゃんでツンツンしたドジっ娘であるなど属性の塊でもある。なお、カラーでは朱音の髪はピンク色で描かれているので恐らく淫乱枠(偏見)。きっとそのうち実力行使に出て朱音×晶でゆりんゆりんしてくれるに違いない(ゆりんゆりん?)。
 主要キャラでは唯一の男の子(え?)で、あきまこ姉妹から好意を持たれている司くんは、トラックにはねられてもかすり傷で済むという頑丈な体の持ち主でありながら4人娘の陰に隠れていまいち存在感の薄いところがある。そのうち会話や回想シーンの中でしか登場しなくなるかもしれない。がんばれ男の子。

 と、周りを個性豊かな面々に囲まれる中、主役を張っている真琴はその実あまり特徴がない。特徴がないことが特徴といってもいいぐらいである。優等生の姉(兄?)に比べると成績は普通。ゆるふわロングな姉(兄?)に対して黒ベタのショートカット。姉、もとい兄が女装を続けていることでその悩みが尽きることはないが、元から兄は姉だったと思えば悩む必要などない。そう考えると本当に真琴自身には特徴がない。
 だがしかし。駄菓子菓子。
 真琴が悩まなくてもいいことに頭を悩ませていることは彼女の根が真面目であることを端的に示している。事実、作中でも翠が真琴を評して「常識人(ただしある1点を除く)」と言っている。
 真琴の黒ベタショートはつまりおかっぱである。真琴はおかっぱかわいい。
 そして、なにより真琴のよいところは生物学的には兄である晶を「お姉ちゃん」とごく自然に呼ぶことだ。もちろん幼少のみぎりより女装していた晶を兄と呼ぶには違和感があっただろうし、もしかすると晶の方から姉と呼ぶように働きかけた結果なのかもしれない。
 それでも。誰よりも女の子らしく誰よりも優しい、そして妹思いの晶を、その生き方ごと受け入れ「お姉ちゃん」と呼び慕う。こんなできた妹がかつて存在しただろうか。真琴が片思いする司くんを生物学的には同性であるはずの晶が好きになっても、その事実を受け入れた上で、姉、もとい兄を恋敵と見なし、恋のレースを姉妹(兄妹?)で走る。その境遇にもかかわらずこんなにも健気なさまを保ち続ける妹がかつて存在しただろうか。
 真琴はどこにでもいそうな女の子である。クラスメイトに恋をして、姉(兄?)の可憐さに憧れる普通の少女である。だが、男の娘を姉に持つがゆえにその妹性が花開き、男の娘である姉と同じ少年に恋い焦がれるがゆえにその殊勝な側面が輝きを放つようになった。だから真琴はこの物語の主人公なのである。
 以上をまとめると、真琴はおかっぱかわいい。大事なことなので2回言いました。

 『兄がライバル!』というマンガはよくある男の娘ものかと思いきや、その本質は男の娘である姉に振り回される健気な妹を描いた妹マンガであるところにある。

【出典】
・原作・かさまひろゆき、作画・宮月もそこ 『兄がライバル!』第1巻、マイクロマガジン<マイクロマガジン☆コミックス>、2014/8/1発行
兄がライバル! | 創作漫画サイト→公式ブログ
兄がライバル! - マンガごっちゃ→こちらで連載中
「兄がライバル!」特設サイト - マンガごっちゃ→単行本化記念の特設サイト
めぞん ピコピコ→原作者・かさまひろゆき氏のサイト
CUTIE→作画担当・宮月もそこ氏のサイト

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