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2014/03/11

紙面を突き抜けて和太鼓を轟かせるのは模範的優等生のお嬢様とちょっと変わった可憐なシスター! すたひろ『和太鼓†ガールズ』第1巻

『和太鼓†ガールズ』第1巻

 表紙に描かれた女子高生とシスターと和太鼓という組み合わせに心躍らされるのもさることながら、さわやか青春系部活マンガと思って読み始めると想像の斜め上を行っていることに二度心躍らされる。どうしようこのマンガ、和太鼓部にもその周りにもまともな娘が1人もいないよ。だがそれがいい。

 舞台はミッション系女子校である珠ノ坂女学園、通称珠女の高等部。中等部から上がってきたばかりの環(たまき)は親の期待に応えるべくレールの上をひた走ってきた超が付くほどの優等生。一方、唯一の和太鼓部員であるマリアはあるものを失ってしまった代わりに和太鼓で言葉を表す問題児扱いのシスター特待生。その環とマリアがひょんなことから出会い、仲間を得て、やがて和太鼓にのめり込むようになる。『和太鼓†ガールズ』はそんな和太鼓に青春をかける少女たちを描いたマンガだ。

 「優等生」や「問題児」というのはとてもわかりやすいレッテルだ。そうやって仕分けてしまえば学校側も管理しやすい。それが生徒本人が意図したものであるにしろ意図せざるものであるにしろ、一度貼られたレッテルを別のものに貼り替えるのは容易いことではないだろう。
 『和太鼓†ガールズ』の主人公である環は親の望むまま優等生となり、また自ら優等生たらんとし、そのための努力も気遣いも怠ることなく積み重ねてきた。環にとって優等生というレッテルは鎧であり武器である。それをマリアは易々と破った。当初は環にとって不可解と思われる行動を取ったマリアは完全なる異分子だった。可憐なシスター装束で和太鼓をどんどこ叩き、ライナスの毛布よろしく肩から提げた太鼓を所構わずどんつく打ち鳴らすマリアは、優等生である環にとっては謎の生物以外の何者でもない。環は「和太鼓なんて優等生のイメージと違う」とまで思っている。それではなぜ環はマリアとともに和太鼓を打つ道を選んだのか。
 なんてことはない。環は意外とちょろかった。マリアの奏でる、マンガの紙面を突き破って天にも届くような和太鼓の音に環は魅了されてしまった。このマンガの読者がそうであるように環はマリアの太鼓にどどどんと打ちのめされてしまった。もちろんそれにはマンガにも描かれているように、環が音楽に挫折した過去を持つことや環がマリアの境遇を知ったことも関係しているだろう。ただそれだけではない。自分を変えたいという想い。誰かの力になりたいという願い。誰かに力になって欲しいという祈り。誰もが認める優等生という無難なキャラを演じながらもいつか誰かがそのキャラを返上するきっかけとなってくれることを、環はずっと待っていたのだろう。マリアが和太鼓をともに叩く友をずっと求めていたように。

 さて、環がマリアと和太鼓に出会った後の最初の課題は部の存続のために部員を集めることだった。ありがちと言えばありがちな展開ではあるが、部活マンガでは重要な課程である。その部員集めも1巻ではまだ志半ばだが、応じるのはハーフのヤンキーちゃんに、環の幼なじみで自称ファッションリーダーで環の真面目っ子グループとは対極に位置するギャルグループのリーダーなど、いわゆる問題児ばかりだ。環に絡んでくるちょい役も含めると、それこそこの学校には優等生と問題児しかいないのではないかと思えてくる。問題児たちが珠女から来るそうですよ? だが、誰だって多かれ少なかれ何かしらの問題は抱えているもの。欠点が見方を変えると有利な特徴になることがあるように、問題児だって見方を変えれば際だった特技を持った素晴らしい生徒になり得る。そう考えると環とマリアの周りに問題児ばかり集まってくるのも納得がいく。珠女和太鼓部にとって問題児は有望な部員の宝庫なのだ。

 「和太鼓に決まった型や作法なんてねぇ」(p.131)とは劇中の言葉であるが、マリアと和太鼓に出会ったことをきっかけに優等生の型と作法を捨てて環が飛び込んだ世界はさながら和太鼓そのものだ。それが環とマリア、そして学校のはみ出し者たちにどんな成長をもたらすのだろうか。

【出典】
・すたひろ 『和太鼓†ガールズ』第1巻、双葉社<アクションコミックス>、2014/3/10発行
和太鼓†ガールズ / すたひろ - ニコニコ静画(マンガ)→試し読みあり
すたひろ日和→作者のブログ

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