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2013/12/16

東北の田舎に暮らす巫女中学生とクマののどかな日常 吉元ますめ『くまみこ』第1巻

『くまみこ』第1巻

 田舎暮らしゆえに世間知らずで一般常識に疎い14歳の巫女と世の中の動きにも敏感な常識人(常識熊?)でまちの後見人(後見熊?)を務めるクマののどかでゆかいな日々を描いたマンガがこの『くまみこ』だ。

 今東北が熱い。マンガでもドラマでも東北の山奥や海辺を舞台にした作品をここ1、2年ほどでずいぶん見かけるようになった。それらすべてを見ているわけではないが、それらは田舎を美化したり礼賛したりするようなものではなく、あくまで地方の実状を基にした等身大の田舎暮らしを描いているように思う。交通や物流など不便なものは不便だし、山や海の恩恵にあずかり祭りや風習などの伝統を守り続ける。そういった田舎ならではの物事に立脚した物語が、あるときはユーモラスに、あるときはしんみりと描かれ、読者または視聴者を惹きつける。彼らはそれらを通じて東北の特徴を認識し、あるいは再発見し、やがて自分の目でそれらを見たり経験したりしたくなるのだろう。

 熊を奉った神社の巫女として仕える身であるまちは一方でお年頃の中学生でもあり、ないない尽くしの田舎暮らしに嫌気がさして都会の高校へ行きたがっている。ところが、まちの後見人であるナツはまちの常識の欠如を危ぶんでまちがナツの下を離れて都会の高校へ進学することに反対する。どうしても折れないまちに、ナツはまちが都会でも暮らせるよう試練を与えることにする――。『くまみこ』は東北地方の山奥で暮らす女子中学生の雨宿まちと人語を解するクマのナツのそんな日常を描いている。
 ナツが4ページにも渡ってまちが幼い頃の回想シーンを繰り広げているところを見ると、単に過保護なナツが猫かわいがりしているまちを放したくないだけなのではないかとも思ってしまう。だが、釣りをするナツにすっぽり収まって雑誌を読んだり窮地に陥ったときにナツを呼んだりと、なんだかんだでナツに懐いているまちを見ればナツでなくともまちとナツをセットにしておきたくなってしまう。そう、まちとナツは単品ではそれぞれ巫女をしている中学生ともふもふのクマさんに過ぎず、どちらもそこそこ魅力的な存在ではある。だが、2人が揃うと途端にかわいさ倍増、おもしろさも倍増し、その威力は4倍、いやおそらく10倍にもなるだろう。Wordが使えるクマとヒートテックすら知らない巫女の相乗効果がえも言われぬ魅力を発揮する。『くまみこ』はそんなマンガだ。

 ところで、まちの巫女装束はアイヌの伝統を受け継いでいることが劇中で語られている。アイヌというと北海道というイメージがあるが、「昔は本州にもアイヌがいたんだよ」「東北の各地にアイヌ語源の地名も残ってる」(p.147)という台詞があるように東北にもアイヌの伝承があるという。学生時代に履修したアイヌ語の授業によると、「アイヌ」は人間のことであり、それと並んで有名な言葉である「カムイ」は動物や植物など人間以外の事物全般を指す。そして、その「カムイ」は一般的な名詞として使われる場合、「熊」を意味する。『くまみこ』でアイヌの民族衣装に身を包むまち=人間の守り役がナツ=熊なのはそういうところから来ているのかもしれない。

【出典】
・吉元ますめ 『くまみこ』第1巻 メディアファクトリー<MFコミックスフラッパーシリーズ>、2013/10/31発行

【関連記事】
ゆうべはおたのしみでしたね!(もふもふ的な意味で) 吉元ますめ『くまみこ』第2巻(2014/5/24追記)

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