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2012/12/23

『中二病でも恋がしたい!』に見る並行世界

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 『中二病でも恋がしたい!』原作小説の既刊2巻を読んだ。以下、感想代わりに思ったことを少し。

 まず原作とアニメとで話が全く違うことに驚く。小説なりマンガなりを原作にしたアニメはたいていの場合、多少のオリジナル要素は入るものの原作から大きく離れたりはしないものだと思っているが、『中二病』の場合は勇太がかつて中二病に罹患していたことと六花が現在進行形で中二病を患っていること以外はほぼ別物であると言っていい。勇太と六花の家の位置関係、一色が最初から坊主頭か否か、原作には凸守やくみん先輩、姉の十花がいないなど、違いを挙げれば枚挙に暇がなく、そもそも勇太と六花の出会いからして異なっている。さらに付け加えれば、原作は勇太の一人称として書かれているため、原作六花がアニメ六花よりも笑顔を見せたり拗ねたりと表情が豊かに見えるというフィルターの効果により、勇太が最初から六花にぞっこんだったこともわかる。

 既に示唆している人も多いと思うけれど、先に挙げたような違いと設定の共通部分を踏まえ、原作とアニメは並行世界の関係にあると言えると思う。原作もアニメも元中二病の勇太と現役中二病の六花が出会うことから始まってお互いに好意を確かめ合うところが一つの到達点であるとすると、『ドラえもん』第1話でセワシが指摘していたようにどういう手段を取っても勇太と六花の関係性は変わらないのだろう。

 ここで『中二病~』という題名が示すとおり「中二病」という一種の流行り病に立脚していることを鑑みて中二病的観点から『中二病~』が構成する世界を見渡すと、原作とアニメが描く並行世界のあり方にいくつかの可能性が考えられることに気づく。

 1つ目は原作とアニメは並行世界の特定の2つを観測したものであり、他にも第3、第4、……の並行世界が存在し、それぞれの世界で勇太と六花の恋物語が展開されている可能性。この場合、例えば『中二病~』のコミカライズがあるしたら是非とも第3、第4の世界での勇太と六花の話を読んでみたい。

 2つ目は原作もアニメもただ1人だけ存在するオリジナルの六花が想像した世界であるという可能性。オリジナル六花は中二病の権化かもしれないし、中二病をその内にのみ秘めている普通の少女かもしれない。その六花が描いた妄想、想像、願望、夢の1つが原作でありアニメとして描かれていると考えられる。
 と、どこかで見たような設定だと思ったら、『宇宙英雄物語』というマンガで読んだことを思い出した。主人公・護堂十字の父親である護堂・ジェイムズ・千太郎は宇宙英雄キャプテン・ロジャー・フォーチュンの息子として産まれながら、父親の語る荒唐無稽な英雄物語に反発し非科学的な話を一切受け付けない。だが、同時に胸中では常にロジャーへの憧憬を抱く、宇宙英雄を恋い焦がれる人物として描かれており、そのことがマンガの重要な要素となっている。このマンガが描かれた15、6年前はまだ中二病という概念はなかったように思うけれど、宇宙英雄が闊歩する世界を夢想する護堂・ジェイムズ・千太郎は高校生の息子を持ついい年をした大人でありながら、もっとも偉大な現役中二病患者の1人であると言っても過言ではない。

 3つ目は『まどかマギカ』のほむほむのように勇太もしくは六花のどちらか、あるいは両者が、彼らの思い描く理想の恋仲になれるまで時間を巻き戻している可能性。この場合、勇太と六花のどちらが時間遡航者かに検証が必要になるが、単なる中二病発症者が誰も彼も時間を操れるなら今頃自分は宇宙英雄くらいにはなっている。

 ここでまた少し前の原作とアニメの違いに戻る。原作とアニメとでもっとも大きく異なると感じたのは勇太と六花の2人と、2人以外の人物たちとの関係だった。原作、特に1巻では六花は邪王真眼の使い手として孤高の存在であり、関わりを持つのはほとんど勇太とのみだ。一方でアニメは早い段階で邪王真眼のサーヴァントとして六花を慕う凸守やお昼寝くみん先輩と部活動を始め、モリサマーもなんだかんだで巻き込んで賑やかな学校生活を送っている。

 そこで4つ目として、孤高の存在である原作六花が本当はみんなと一緒にいたい自分というあり得た可能性を具現化したのがアニメ六花であるという可能性を挙げたい。アニメにしか登場しない凸守やくみんは偶然アニメにしか出なかったのではない。原作2巻の七宮の言葉を借りれば「偶然と偶然が重なればそれは必然」であり、アニメOPの歌詞でも「偶然聞こえた誰かの声がもう一度聞こえたとき必然を信じた」と謳っている。すなわち、ほぼ孤立していたと言ってもいい原作六花がそう望んだ結果としてアニメ六花は必然的に凸守やくみんと出会ったのだろう。

 ところで、七宮である。『中二病~』原作1巻では勇太とモリサマーの会話の中でだけ、それこそ都市伝説のように登場する七宮智音(さとね)は、当時中学一年生だった勇太を中二病に感染させた張本人であり、2巻では偶然と偶然が重なった必然の邂逅を経て勇太と再会し六花と対峙することになる人物であり、重度の中二病患者として描かれている。
 この七宮がとてもかっこいい。
 作中で勇太も言及しているが、すごくかっこいい中二病患者なのである。かわいいと自覚しているアイドルが最大限に自分を魅せる方法を知っているように、七宮は中二病を自覚した上で臆することも恥じることもなく自らの内なる妄想能力を最大限に輝かせる方法を知っている。そして自らを輝かせるだけではない。自分の周囲から中二病に素質のある者を見出しては能力者として覚醒させることに長けている。生まれる時代が時代なら民衆の先導者として歴史に名を残していたのではないかと思えてくる。
 そんな七宮の自分設定は「魔法魔王少女ソフィアちゃん」、高笑いは「にっーはっはっ!」、高校の改造制服に身を包み真夏でもマフラーをなびかせる明朗快活な少女である。『中二病~』のアニメ2期があれば是非出して欲しい。いや、出すべき。「にっーはっはっ!」をどう発音するかすごく聞きたい。

 なお、原作2巻は七宮対六花の闇の眷属同士の戦いの場面を除くとほぼ丸々勇太と六花の壮大なのろけが描かれているだけと言っても大きく間違ってはいないと思う。序盤で2人が付き合って1ヶ月記念のデートをしているが、その最後のくだりなんて特にね、そのままアニメとして全国のお茶の間に流された日には日本中の居間という居間から壁が失われ寒風吹き荒ぶこと請け合いである。というか、それを見るためなら壁のない我が家で冬将軍を迎え撃つことも辞さない覚悟なので、アニメ2期で七宮お願いします。七宮はよ!

 ここでまた並行世界の話に戻すと、原作2巻を考慮すると『中二病~』は六花の好敵手(と書いて明日の友と読む)たる七宮が作り出した世界とも考えられる。もっとも、原作2巻の展開は必ずしも七宮の望んだ方向に進んでいるとは言い難いため、そういう意味では七宮の世界とは断定しづらい。ただ、恐らく単体では六花を凌駕する中二病能力者である七宮に世界を作る能力がないとは思えないので、七宮の中二病能力により原作とは違う設定、異なる展開を見せるアニメ2期の世界が生み出されるはず。

 ここまでの話を体よく纏めると、『中二病~』の世界は原作もアニメも勇太、六花、あるいは七宮が中二病の妄想能力を発揮して生成した並行世界の1つであり、あるいは3人の化学反応の下に開闢した宇宙の1つである。それゆえにアニメは原作と全く異なる物語でありながら原作と同時に存在し得るし、この世に遍くすべての読者や視聴者が抱いた感想や、書き手や描き手が生み出した二次創作は偶然と偶然が重なった結果として必然的に存在すべきものとなる。その一環として七宮を早くアニメに出すべき。大事なことなので3回言いました。

 そういえば、アニメ六花によって生み出された「不可視境界線」という概念は此岸と彼岸とを分ける線を意味していたが、1つ上の視点から見ると原作の世界とアニメの世界を分ける分水嶺というこじつけができないこともない。つまり、アニメ六花はその中二病で培った能力により原作の世界の存在をうっすらと感じ取っていたのではないだろうか。そうすると、アニメは原作の後の世界に位置付けられるという意味で前述の3つ目の説が有力になるが、せっかく4つ目の説を出したので、ここはアニメ六花は原作立花の想いを受け「みんなと一緒にいる」という願いを叶えた存在であり、原作六花とは並行した存在であると思いたい。

 以上、原作とアニメのそれぞれで描かれた物語を両者は並行世界の関係にあるという仮定の下に書いてきたが、『中二病~』の感想をざっくりと言えば「原作もアニメも面白かった」の一言に尽きる。と、歯切れよく言い切りたいのは山々ではあるものの、この文章の元になる文はアニメ10話と11話の間にtwitterに投稿したものであるため、アニメ終盤の2話の内容を反映していない。ただ、12話を総じて見れば面白かったとは思うし、足りなかったり改変したい部分は各人が妄想するなりそういった文献を当たるなりすればいいので、大きな問題ではない……か? とりあえず、動く七宮と凸サマーの薄い本はよ。

【出典】
・虎虎・逢坂望美 『中二病でも恋がしたい!』第1巻、京都アニメーション<KAエスマ文庫>、2011年
・虎虎・逢坂望美 『中二病でも恋がしたい!』第2巻、京都アニメーション<KAエスマ文庫>、2011年
KAエスマ文庫『中二病でも恋がしたい!』公式サイト

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